深夜0時にこんばんは:ラジオがつなぐ人間模様

2013/04/17Comic 漫画, 太田出版

深夜0時にこんばんは
冬川智子
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ここのところ立て続けに刊行される冬川智子作品。
今回もなかなかに良作ですぞ…。

本作はとあるラジオ番組を媒介に、性別も年齢も社会的立場も違う3人の男女それぞれの物語が展開する人間ドラマ。

ラジオが今どれだけメディアとしての影響力を持っているのかわからないけど、ラジオをよく聴く(聴いていた)人にとってはラジオがモチーフになっているというだけで評価は一段上がるんじゃないかなぁと想像する。

自分は昔も今もあんまりラジオは聴かない人間だけど、なぜかこのモチーフにはある種のノスタルジーを感じるんだよな。ここ1、2年は「ラジオの復権」なんてことも言われたけど、今はtwitterとかLINEとかニコ生とかユーストとかあるし、やはりラジオというレガシーメディアの影響力は昔ほどはないだろうから。

ただ、ラジオに限らずこういう「遠く離れたところにいる人や、ふだん接点がない人が図らずも同じ何かを共有していたことから始まる物語」というのは大好きだ。ある意味定番といえば定番なのかもしれないけど、そのぶん安心して読めるというのが大きいのかもしれない。

作中に出てくる3人の中では自分の現在の境遇からするとやはりカホ(&葛西)の物語が一番実感があるかなぁ。大人になるってこういうことなんだよ、的な…。

一方、男性読者としてはやはりアキラくんには同情せざるを得ない。…が、あのリアクションを返してきた優亜ちゃんはむしろ天使だった、ということに彼もいつか気づく日が来るだろう、とも思ったり。このエピソードはリアル中学生に感想を聞けるときっと面白いだろうなぁ。

欲を言えばカホ・アキラ・由美の3人もどこかで別の繋がりがある、みたいな設定も欲しかったけど、逆にまったく接点がないところがこの作品の構成の妙なのかなとも思う。いずれにしてもこの腹八分目な読後感は嫌いじゃない。

そんなわけで、「ラジオ」というモチーフに温度差はあるだろうけど、登場人物のプロフィールのばらけ具合もあって、わりと幅広い層に受け入れられそうな作品だと思う。「わかりやすさ」重視の人には物足りないかもしれないけど、読後にあれこれ反芻するのが好きな人にはオススメ。




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