
本記事はIDCの「Smart Glasses Surge: The XR Market Is Rewriting Its Own Rules」を抄訳したものです。
IDCは最新の市場分析で、2026年がスマートグラス市場にとって大きな転換点になったとの見方を示した。これまでXR市場はVRヘッドセットやゲーム用途が中心だったが、現在は日常的に身に着けられるスマートグラスが市場を牽引する存在へと変化している。
IDCは「スマートグラスはもはやニッチ市場ではなく、市場そのものになった」と評価しており、今後はデバイスそのものではなく、AIやプラットフォームを含めたエコシステム競争へ移行すると予測している。
ディスプレイ非搭載スマートグラスが前年比167%増
IDCによると、ディスプレイを搭載しないスマートグラスの2026年第1四半期の出荷台数は約225万台となり、前年同期比167%増を記録。これは2024年通年の出荷台数約270万台に迫る規模で、わずか3か月で2年前の年間市場に匹敵する出荷が行われた計算になる。
また、ARグラスやMRヘッドセットなど、ディスプレイを備えたXRデバイスも前年同期比86%増と大きく伸びており、アイウェア型デバイス全体が急速に普及していることがうかがえる。
IDCは、スマートグラスが「アーリーアダプター向け製品」から一般消費者向け製品へ移行した象徴的な年が2026年だと分析している。
Metaが約7割のシェアを維持
市場シェアではMetaが69.2%と圧倒的な首位を維持している。
その背景には、エシロールルックスオティカ(EssilorLuxottica)との提携によるRay-Ban Metaシリーズの成功がある。従来のガジェットらしい外観ではなく、普段使いできるデザインを実現したことに加え、世界最大級の眼鏡販売ネットワークを活用できることが大きな強みだ。
2位以下はRayNeo(3.4%)、Xiaomi(シャオミ、3.1%)、VITURE(ヴィチュアー、2.5%)、XREAL(2.0%)が続く。一方で「その他」のメーカーが19.8%を占めており、多数の新規参入企業が市場を形成し始めていることも特徴である。
GoogleやSnap、中国メーカーが追撃
IDCはMetaの優位性を認めつつも、その地位は盤石ではないと分析する。
特にGoogleは、GeminiをGmailやGoogleフォト、検索、カレンダーなど既存サービスへ深く統合していることが大きな武器だ。Android XR対応スマートグラスでは、ユーザーが普段利用するGoogleサービスとAIがシームレスにつながることで、Metaとは異なる価値を提供できる可能性がある。
また、SnapはAR開発基盤「Lens Studio」と長年培ってきたAR体験のノウハウを持ち、次世代「Specs」の展開が期待される。
さらにシャオミやファーウェイ(Huawei)、アリババ(Alibaba)、RayNeoをはじめとする中国メーカーも存在感を高めている。これらの企業は価格競争力だけでなく、自社AIモデルの開発も進めており、アジア市場を中心に競争が一段と激しくなる見込みだ。
競争の焦点は「AI体験」
IDCは、今後の競争は単純な販売台数ではなく、「もっとも便利なAI体験を提供できるか」に移ると指摘する。
Metaは販売網や実際の利用データで先行しているが、Googleは日常的に利用されるAIサービスとの連携、SnapはARコンテンツ基盤、中国メーカーは価格競争力を武器に市場へ参入しており、それぞれ異なる強みを持つ。
スマートグラスは単なるウェアラブル端末ではなく、「常時利用するAIインターフェース」へ進化しつつあり、ハードウェアだけでなくソフトウェアやAI、サービスを含めたプラットフォーム競争が本格化するとIDCはみている。
2030年に向け市場はさらに拡大
IDCは、ディスプレイ非搭載スマートグラスの年間出荷台数が2026年の約1360万台から2030年には約2730万台へ拡大すると予測。一方で価格は低下し、より多くの消費者が購入しやすくなる見通しだ。
また、XREALやVITUREなどが展開するディスプレイ搭載スマートグラスも、年平均40%を超える成長率を見込んでいる。
IDCは、スマートグラスがファッション性と実用性の両立という壁を越えたことで、XR市場は新たな成長段階へ入ったと結論付けている。今後は「どの企業がもっとも優れたAI体験を提供できるか」が、市場の勢力図を左右する最大のポイントになりそうだ。
(出典:IDC)

