AR/VRヘッドセットの世界出荷台数は2024年に10%増加。2025年は12%の減少を見込む

IT専門調査会社IDC Japanは2025年3月25日、2024年通年のワールドワイドAR/VRヘッドセットの出荷台数に関するレポートを発表した。なお、IDCではAR/VRヘッドセットをAugmented Reality(AR)、Virtual Reality(VR)、Mixed Reality(MR)、Extended Reality(ER)の4カテゴリで調査している(※)。
IDCの分析によると、AR/VRヘッドセットの世界出荷台数は2024年に10%増加。ホリデーシーズンの四半期に新製品が発売されたことに加え、年間を通して複数の新規参入企業が参入したことで、2年間の低迷から回復し、市場は成長に転じた。
Metaは年間を通じて74.6%のシェアを獲得し、引き続き市場をリード。次いでAppleが5.2%、Sonyが4.3%、ByteDanceが4.1%、XREALが3.3%でトップ5にランクインした。
しかし上位5社の中では、新製品とゲームに特化したユースケースの好調により、前年比で成長を記録したのはMetaとXREALのみ。両社はよりプレミアムなソリューションを提供することで、それぞれのブランドの平均販売価格(Average Selling Price、ASP)を引き上げることに成功している。
2024年を通して、Appleの新ヘッドセット「Apple Vision Pro」の発売に加え、Meta Quest 3(後に3Sも)、PICO 4といった好評のヘッドセットの発売により、商用需要が増加した。
開発者はMetaとAppleのデバイスで複合現実(Mixed Reality、MR)体験を創出することに意欲的であり、導入規模を拡大したい開発者はQuestに加えてPICO製品も選択している。
さらに、Metaが教育分野に進出したことで、この需要は2024年に前年比69.4%の成長を記録。業務用出荷台数は全体で14.9%増加している。
IDCのワールドワイドモバイルデバイス調査担当リサーチマネージャー、Jitesh Ubrani氏は以下のように語る。
「昨年はハードウェアにとって素晴らしい年でした。AppleやMetaといった大手ブランドから新しいMRヘッドセットが発表されただけでなく、Even RealitiesやRayNeoといった中堅ブランドにとっても素晴らしい年でした。
両社は、製品サイズの小型化と、ディスプレイ搭載メガネのユーザーフレンドリーなデザインに注力し、Ray-Ban Metaスマートグラスのような人気スマートグラスにディスプレイ技術を追加した形で対抗しました。
2025年には、ディスプレイ搭載メガネやマルチモーダルAIの搭載がさらに増え、Android XRハードウェアの導入も進むと予想されます。これにより、Meta、Apple、Googleといった主要メーカー間でプラットフォーム間の競争が激化する可能性があります」。
2025年には新型ハードウェアの登場が見込まれるものの、供給指標が主要プレーヤーの一部の発売遅れを示唆していることから、IDCでは年間12%の減少を予測している。
ただし、2026年には87%の成長で回復し、2021年のパンデミック中に記録されたピーク時の1120万台を超えると予想。2025年から2029年にかけて、AR/VR市場は年平均成長率(CAGR)38.6%で成長すると予測している。
ARVR市場の成長に伴い、消費者向けおよび業務利用の機会も拡大する見込み。IDCのXRハードウェアおよびインタラクティブ3Dソフトウェアチームのリサーチディレクター、Ramon T. Llamas氏は次のように指摘する。
「歴史的に、仮想現実(VR)はゲームやマルチメディアなど消費者の領域であり、拡張現実(AR)は主にワークフローの迅速化を目的とした業務用ユーザーを対象としてきました。
複合現実(MR)の台頭は、没入型の仮想体験と、ユーザーの周囲の環境を投影した映像にデジタルコンテンツを表示する機能の両方を提供し、一般消費者・業務用ユーザー両方のニーズに応えるものとなるでしょう。
一方、拡張現実(ER)は、ゲームやマルチメディア視聴において既に消費者に浸透していますが、企業がこの技術をユーザーや顧客のためにどのように活用できるかは容易に想像できます。これにより、市場は、ユーザーがどのような体験をしたいのか、そしてどれだけの費用をかけたいのかという選択肢を持つことができます」。
※ IDCによるAR/VR/MR/ERの定義は以下のとおり。
- ARヘッドセット: デジタルコンテンツを現実の視野に重ねて表示し、3Dのオブジェクトを操作できるヘッドセット。使用されているグラスは半透明かシースルーになる
- VRヘッドセット: ユーザーの現実世界の視界を完全にさえぎり、デジタル世界を体験できるヘッドセット。基本的にVRヘッドセットを装着しているときは安全環境であることが求められる
- MRヘッドセット: VRと類似しているが、外向きカメラが備えられており、装着したうえでの外出も可能。完全没入型環境と、現実の中にオブジェクトを表示したり追加したりすることができる環境を切り替えることができる
- ERヘッドセット: 外部コンテンツの表示を提供する、シースルーまたは半透明のディスプレイを持つ。単眼であることが必須ではないが、単眼タイプの製品が多く含まれる
(出典:IDC)