前年同期比67.4%減。一方でデバイスの平均販売価格は上昇
IT専門調査会社IDCは2024年6月18日、2024年第1四半期のAR/VRヘッドセット市場動向に関するレポートをリリースした。同レポートによると、2024年第1四半期のAR/VRヘッドセットグローバル出荷台数は前年比28.1%減の110万台。
この減少は今後も続くと予想され、2024年通年の出荷は前年比1.5%の減少が見込まれる。一方で、新技術やより手頃な価格のデバイスの登場により、2025年には41.4%の成長を予測している。
同四半期はMetaが60.5%のシェアで市場をリードし、ソニー、Apple、ByteDance、そしてXREALがそれに続く。
2024年第1四半期は景気の低迷、平均販売価格の上昇圧力、さらに主要プレイヤーであるソニーのPlayStation VR2余剰在庫により打撃を受けた。これらの問題の多くは第2四半期には軽減されたものの、価格は依然として高止まりしている。
IDCのモバイルデバイス調査担当リサーチマネージャーであるJitesh Ubrani氏は次のように述べている。
「ここ最近の四半期単位において、MRヘッドセットはMeta Quest 3の発売、そして後のApple Vision Pro登場により、表現の精細さで飛躍を遂げました。しかし、手頃な選択肢が少ないため、これらの新デバイスを体験した消費者は少数にとどまっています。
しかし、Metaがより手頃な価格のバージョンを投入すると見込まれており、それによって市場は来年成長に回帰することになるでしょう」。
ERヘッドセット(※)もまた、AIの導入や消費者に適したデザインによって成長すると予測されている。
「この業界の初期の時代と同じく、私たちは『スマートグラス』分野を狙った新興企業や、既存ブランドからの次世代製品を目にしています。今回これまでと異なるのは、AIが組み込まれていること、そして消費者に合わせたより薄型で軽量のデザインである点です」。
ARデバイスもまた成長を牽引すると予想されているが、大量生産が困難であることや、価格・コンテンツ描写精度・バッテリー寿命・発熱・光学系といった障壁を克服する必要があるため、出荷量は依然として少ないままである。
既存のARの代表格であるHoloLensも、一部のユースケースがより手頃な新型MRヘッドセットで実現できるため、将来的にはMRデバイスに取って代わられると予想している。
IDCは今後の見通しとして、業界全体が2024年の670万台から2028年には2290万台へと成長し、年平均成長率(CAGR)は36.3%に達すると予測している。
ARとVRの双方の融合の恩恵を受けるMRデバイスが市場を主導することが見込まれ、2028年には出荷量全体の70%以上を占有。一方で、シンプルなヘッドアップディスプレイやコンテンツのミラーリングを備えたERデバイスは、市場の4分の1以上を獲得すると見込んでいる。

※ IDCではAR/VRヘッドセットをAugmented Reality(AR)、Virtual Reality(VR)、Mixed Reality(MR)、Extended Reality(ER)の以下の4カテゴリで調査している。
- ARヘッドセット: デジタルコンテンツを現実の視野に重ねて表示し、3Dのオブジェクトを操作できるヘッドセット。使用されているグラスは半透明かシースルーになる
- VRヘッドセット: ユーザーの現実世界の視界を完全にさえぎり、デジタル世界を体験できるヘッドセット。基本的にVRヘッドセットを装着しているときは安全環境であることが求められる
- MRヘッドセット: VRと類似しているが、外向きカメラが備えられており、装着したうえでの外出も可能。完全没入型環境と、現実の中にオブジェクトを表示したり追加したりすることができる環境を切り替えることができる
- ERヘッドセット: 外部コンテンツの表示を提供する、シースルーまたは半透明のディスプレイを持つ。単眼であることが必須ではないが、単眼タイプの製品が多く含まれる
(出典:IDC)