英国の市場調査会社Omdiaは2026年6月30日、ニアアイ(Near-eye)ディスプレイ市場に関する最新レポート「VR, AR, XR Near Eye Displays – 2026 Analysis」を発表した。2026年の市場は前年から回復に転じる見込みで、特にARグラス向けディスプレイが市場成長をけん引すると予測している。

ニアアイディスプレイ市場は2026年に回復へ
Omdiaによると、2026年のニアアイディスプレイ市場の売上高は前年比12%増の6億7500万ドルとなる見込み。2025年に大きく落ち込んだ市場は回復局面に入り、ディスプレイ出荷台数も前年比16%増の1453万台に達すると予測している。
市場回復の最大の要因は、ARグラス市場の急拡大だ。一方で、VR市場は引き続き低調な需要が続き、AR市場の成長がVR市場の減速を補う構図になると分析している。
Omdiaの主席アナリストであるValerie Li氏は、「2025年以降、XR業界では大きな戦略転換が起きている」と指摘。Meta、Apple、Samsung、Huaweiといった大手企業が、VRヘッドセットの新製品投入を見直す一方で、軽量なAIスマートグラスやARグラスへ開発の軸足を移し始めていると語る。
XRニアアイディスプレイ市場の概要


ARグラス向けディスプレイは前年比154%増を予測
2026年にもっとも高い成長率が見込まれているのがARグラス向けディスプレイ市場だ。RayNeo、Alibaba、XREAL、VITUREなど各社の新製品投入を背景に、ARディスプレイの出荷台数は前年比154%増の410万台、売上高は前年比152%増の1億5,600万ドルへ拡大すると予測している。
Omdiaは、AIスマートグラスやARグラスへの投資拡大に加え、対応アプリケーションや関連サービスなどエコシステムの充実が市場拡大を後押ししていると分析しています。
ARディスプレイ市場とVRディスプレイ市場の推移


VR市場は依然として厳しい状況
一方、VRヘッドセット向けディスプレイ市場は厳しい状況が続く見通しだ。Omdiaは、2025年、2026年と市場縮小が続き、その後の回復も緩やかなものになると予測。その背景として以下のような構造的な課題が挙げられている。
- 大型製品の投入が限定的
- 本体サイズや重量、消費電力の制約
- 長時間装着に適さない設計
- 一般消費者向けキラーコンテンツの不足
さらに、市場の注目や投資はAIスマートグラスや軽量ARデバイスへ移行しつつある。
MetaではQuest 3・Quest 3Sが成熟期に入り、新型VRヘッドセット投入のペースを抑制。Apple Vision Proも当初期待された販売規模には届かず、サムスンのGalaxy XRも市場で十分な存在感を示せていないとOmdiaは指摘する。
こうした状況から、主要メーカーはVR市場への投資に慎重な姿勢を強めていると分析。その結果、2026年のVRディスプレイ市場は出荷台数が前年比4%減の1050万台、売上高も前年比4%減の5億1870万ドルになる見込みだ。
Omdiaのレポートは、XR業界全体で「VR中心」から「AIスマートグラス・ARグラス中心」へと重心が移りつつあることを改めて示す内容となっています。
ニアアイディスプレイ市場全体は回復基調にあるものの、現時点でその原動力はVRではなくARです。AI機能を搭載したスマートグラスや軽量ARグラスへの投資が加速するなか、今後もAR市場がディスプレイ業界全体の成長を支える存在になると見てよさそうです。
(出典:Omdia)
