【IDC調査】 IDC、2024年第3四半期の世界AR/VRヘッドセット市場動向データを発表

前年同期比12.8%の増加、前2四半期の減少トレンドに歯止め

 IT専門調査会社IDCは2024年12月16日、2024年第3四半期のAR/VRヘッドセット市場動向に関するレポートをリリースした。同レポートによると、2024年第3四半期のAR/VRヘッドセットグローバル出荷台数は前年同期比12.8%増と、第1・第2四半期の減少トレンドから増加へと転じた。


 上位5社の中で、Metaは70.8%のシェアを獲得し首位に。同社はMeta Quest 2が段階的に販売終了に向かっていた2023年第3四半期に22.7%の出荷減少となっていたため、前年比で有利な比較となった。

 数四半期を経て、Meta Quest 3はより幅広いコンテンツのラインナップやAmazonプライムデーなどの販促キャンペーンに支えられ、ようやく市場での地位を確立し始めた。

 ソニーのPlayStation VR2(PSVR2)は6.7%のシェアで2位にランクイン。PCゲーマーからの注目を集め、Metaと同じく販促施策の恩恵も受けた。その他、3位以下はApple、ByteDance、XREALとなっている。


 市場はかなり寡占的になっており、5社で90%以上のシェアを占めているが、これらの企業に関しても、一部は見通しが不透明である。

 IDCのモバイルデバイス調査担当リサーチマネージャー、Jitesh Ubrani氏は次のように述べている。

 「ソニーとByteDanceのヘッドセット製造への注力は揺らいでいるように見え、両メーカーの出荷は減少し続けています。これはXREALやVITUREのような、ゲーマーに訴求しつつハードウェアとソフトウェアの両方でイノベーションを行っているブランドにとってはチャンスでしょう」。

 一方、Meta Quest 3のようなMRヘッドセットの多用途性はすでに他のカテゴリを凌駕しており、条件がそろえばARヘッドセットを置き換える可能性さえある。そのため、IDCはMRヘッドセットが2025年に21.7%増の770万台を出荷し、今後最大のカテゴリになると予測している。

 MR以外では、シンプルなヘッドアップディスプレイ(HUD)やコンテンツのミラーリングを提供するERデバイス(※)が次に大きなカテゴリとなると予想、今後18か月にわたって競争が激化するだろうとした。

 Jitesh Ubrani氏は続けてこう語る。

 「AIとHUDを組み合わせたグラス型デバイスは、消費者と企業の双方に対して強力な体験を提供できます。GoogleがAndroid XRを通じて市場に再参入することで、競争は激しくなるでしょう。AppleもMetaも、一般市場においてまだ明確な勝者にはなれていないからです」。

 Android XRはMetaをはじめとする多数のスタートアップや既存大手とともに、ERヘッドセットを2025年に2倍以上に拡大させ、2028年末までに年平均成長率(CAGR)85.7%の成長が見込まれる。

 ERヘッドセットは規模的には第2のカテゴリとして、主にスマートフォンやその他のコンピューティングデバイスに接続されて使用されることになる。

 ただし、Metaの「Orion」のような“真のARヘッドセット”には高い技術スタックが必要なほか、バッテリーやディスプレイ技術がまだスケールしていないため、普及には時間がかかるだろうと分析した。

 こうしたことから、IDCでは2024年の5万9000台から2028年には37万7000台と、ERヘッドセットの成長がニッチなものにとどまると予測している。

世界AR/VRヘッドセット、2024年~2028年出荷台数予測
(世界AR/VRヘッドセット、2024年~2028年出荷台数予測/ 画像出典: IDC)

※ IDCではAR/VRヘッドセットをAugmented Reality(AR)、Virtual Reality(VR)、Mixed Reality(MR)、Extended Reality(ER)の以下の4カテゴリで調査している。

  • ARヘッドセット: デジタルコンテンツを現実の視野に重ねて表示し、3Dのオブジェクトを操作できるヘッドセット。使用されているグラスは半透明かシースルーになる
  • VRヘッドセット: ユーザーの現実世界の視界を完全にさえぎり、デジタル世界を体験できるヘッドセット。基本的にVRヘッドセットを装着しているときは安全環境であることが求められる
  • MRヘッドセット: VRと類似しているが、外向きカメラが備えられており、装着したうえでの外出も可能。完全没入型環境と、現実の中にオブジェクトを表示したり追加したりすることができる環境を切り替えることができる
  • ERヘッドセット: 外部コンテンツの表示を提供する、シースルーまたは半透明のディスプレイを持つ。単眼であることが必須ではないが、単眼タイプの製品が多く含まれる

(出典:IDC