前年同期比18.1%の成長。市場の回復をMetaが牽引
IT専門調査会社IDCは2025年6月18日、2025年第1四半期のAR/VRヘッドセット市場動向に関するレポートをリリースした。同レポートによると、世界のAR/VRヘッドセット市場は2025年第1四半期に前年比18.1%の成長を見せ、回復傾向を示した。回復を牽引したのはMetaで、市場シェアの50.8%を獲得している。
「市場はより没入感があり、多用途な体験へと明確にシフトしています」と、IDCのモバイルデバイス調査担当リサーチマネージャーであるJitesh Ubrani氏は語る。
「Metaが引き続き市場をリードしている一方で、VitureやXREALといったブランドの台頭は、フォームファクター(形状)やユーザー体験のアップデートが消費者に響いていることを示しています。
次の成長の波は、AIやAndroid XRプラットフォームの成熟とともに、MR(Mixed Reality、複合現実)およびER(Extended Reality、拡張現実※)によってもたらされるでしょう」。
トップ5のメーカーの中で、XREALは「XREAL One」シリーズの好調な出荷により2位を確保。VITUREは前年比268.4%の大幅な成長を記録し、TCLも91.6%という伸びを見せた。対照的に、「その他」は47.2%の急減を示し、確立されたブランドと新興ブランドの両極に集中する製品戦略へとシフトしていることが浮き彫りになっている。
注目すべき点は、従来AR/VR分野で強い存在感を持つソニーやAppleが今四半期の上位ランキングから姿を消したことだ。これは各流通チャネルが両社の製品在庫を健全な状態に維持したためだと考えられる。
また、XREAL、VITURE、TCLという上位5社のうち3社が光学シースルー(OST)グラスに特化しており、3社合計で22.5%の市場シェアを占めたのは今回が初となる。
IDCは今後の見通しとして、純粋なVR(Virtual Reality、仮想現実)ヘッドセットの出荷台数は今後大幅に減少すると予想する一方で、MRとERが市場を主導する存在になる見込みだとしている。
MRは成長するものの、主にゲームやコンテンツ消費向けとして消費者市場での用途が中心になるとみられる。一方、ERのカテゴリに含まれるスマートグラスは、消費者と法人の両方の市場においてより広範な需要を持つと期待される。
MRの出荷台数は2025年の330万台から2029年には1520万台超へと拡大する見通しで、米国での関税導入による供給変動や優先順位の変化を受けて、やや下方修正された。一方、ERは同期間で220万台から860万台に急成長し、ARも堅調に推移して2029年には45.7万台に達する見込み。
IDCのAR/VR担当リサーチディレクター、Ramon T. Llamas氏は「世界のAR/VRヘッドセット市場は重要な転換点を迎えつつあります」と語る。
「かつてMeta、HTC、Sonyといった企業が主導した純粋なVRが市場の中心でしたが、今後数年で縮小に向かう見込みです。同様に、Microsoftの支援を受けて有望視されていた純粋なARも、市場全体の中で小さな位置にとどまると見られます。
一方で、多くのVR企業がMRへと方向転換しており、Appleのような新たな参入企業も見込まれるため、MRは大きな反響を得るでしょう」とLlamas氏は続ける。
「ERヘッドセットは、主にゲーマーの間で引き続き勢いを増していくと見られます。GoogleのAndroid XRがMRとERの両方に与える影響も見逃せません。数多くのスマートフォンメーカーがAndroidを採用したように、同様の現象がこの分野でも起こると期待されています」。
2025年は製品の発売遅延により、出荷台数が前年比12%減となると予測されているものの、2026年には87%の大幅な回復が見込まれ、最終的にはパンデミック時代のピーク(1120万台)を超えるとIDCは予測。2025年から2029年にかけ、市場全体は年平均成長率(CAGR)38.6%で成長すると見込まれる。
企業名 | 2025年Q1 | 2024年Q1 | 前年比成長率 |
---|---|---|---|
Meta | 50.8% | 36.2% | 65.9% |
XREAL | 12.1% | 9.1% | 57.6% |
ByteDance | 9.4% | 11.5% | – 4.3% |
VITURE | 6.2% | 2.0% | 268.4% |
TCL | 4.2% | 2.6% | 91.6% |
その他 | 17.3% | 8.6% | – 47.2% |
合計 | 100.0% | 100.0% | 18.1% |

※ IDCではAR/VRヘッドセットをAugmented Reality(AR)、Virtual Reality(VR)、Mixed Reality(MR)、Extended Reality(ER)の以下の4カテゴリで調査している。
- ARヘッドセット: デジタルコンテンツを現実の視野に重ねて表示し、3Dのオブジェクトを操作できるヘッドセット。使用されているグラスは半透明かシースルーになる
- VRヘッドセット: ユーザーの現実世界の視界を完全にさえぎり、デジタル世界を体験できるヘッドセット。基本的にVRヘッドセットを装着しているときは安全環境であることが求められる
- MRヘッドセット: VRと類似しているが、外向きカメラが備えられており、装着したうえでの外出も可能。完全没入型環境と、現実の中にオブジェクトを表示したり追加したりすることができる環境を切り替えることができる
- ERヘッドセット: 外部コンテンツの表示を提供する、シースルーまたは半透明のディスプレイを持つ。単眼であることが必須ではないが、単眼タイプの製品が多く含まれる
(出典:IDC)