一般層に浸透し始めたXRグラスとゲーマー需要がカギ
IT専門調査会社IDCは2025年12月11日、世界のXR(AR/VR/MR)デバイス市場に関する最新レポートを発表した。
ヘッドセットとグラスを含むXRデバイスの出荷台数は、2025年に前年比41.6%増の1450万台に到達すると予測されている。市場を押し上げているのは、一般層に浸透し始めたXRグラスと、ゲーマーの根強い需要だ。特にMR(Mixed Reality)や大画面視聴の体験価値がユーザーを引きつけているという。
Q3はMetaが75.7%のシェアで独走。Xiaomi・XREALが続く
2025年第3四半期のメーカー別シェアではMetaが75.7%を占め、依然として圧倒的な存在感を示した。Meta QuestシリーズとRay-Banブランドのスマートグラス・AIグラスが好調に推移している。
2位以下の主要プレイヤーは以下のとおり。複数メーカーが成長するなかでも、Metaの支配力が際立つ構図となっている。
- 2位:Xiaomi(4.3%) ― AIグラスの投入が寄与
- 3位:XREAL(2%) ― 350ドル以上のプレミアムグラス市場で強い
- 4位:RayNeo(1.8%) ― アジアで人気の価格志向モデル
- 5位:VITURE(1.3%) ― Best Buy進出など販売網拡大で成長期待
XR市場の構造変化:ヘッドセットは急減、グラスが急成長
IDCは、XR市場が「大きな転換点」にあると指摘する。
- MR/VRヘッドセット: 2025年は前年比42.8%減と予測
- その他XRカテゴリ(主にグラス): 2025年は前年比211.2%増と予測
ヘッドセット型デバイスは2026年に新機種登場で回復が見込まれるものの、用途は主にゲームや業務利用(デザイン・研修・コラボ)のまま限定的と予測される。
一方、XRグラスは2025〜2029年に年平均成長率(CAGR)29.3% と、明確な成長トレンドにある。

成功のカギは「デザイン」「ファッション性」「快適さ」
IDCのモバイルデバイス調査担当リサーチマネージャーであるJitesh Ubrani氏は、市場の注目が「技術力」から「デザイン・快適性」へ移っているとコメントする。
「度付き眼鏡を必要としない人に、一日中グラスをかけてもらうのは非常に難しい。デザイン、バッテリー、アプリのすべてを改善できなければ、市場で成功するのは難しいでしょう」。
スマートグラス・AIグラス市場はウェアラブルの中でも特に「見た目」と「着け心地」が重要になっている。
Google・Appleも参戦、競争が本格化へ
現在はMetaが圧倒しているものの、競争環境には変化が起きつつある。
- GoogleのAndroid XRが2026年以降に本格的に展開
- ハードウェアパートナーとの新製品で市場認知を強化
- XREALなどの新興ブランドにチャンス
一方で、バッテリー寿命やアプリ不足、プライバシー問題、実用性の訴求といった課題も大きい。
IDCのXRハードウェア・インタラクティブ3DソフトウェアのリサーチディレクターであるRamon T. Llamas氏は、XR市場がかつてのスマートフォン黎明期のような競争フェーズに入る可能性を指摘する。
「AppleとGoogleはユーザー基盤とアプリが強み。スマホ市場が2000年代後半に革新競争で急伸したように、XRでも同じことが起こり得ます」。
XRの主役はグラス型へ。本格普及のカギはユーザー体験の最適化
2025年のXR市場では、従来のヘッドセットから、軽量で日常的に使用できるグラス型デバイスへと比重が大きく動き始めている。
2026年以降はGoogleやAppleも参戦し、競争が激化することで、さらなる技術革新とアプリ生態系の拡大が期待される。Metaの独走が続くなか、どのブランドが次の主役になるのか、XR市場は重要な転換期に差しかかっている。
(出典:IDC)

