注目ポイントは企業系VTuberの動向、運営コスト増加の可能性、そしてAI時代においていっそう重要性を増す創造性だ。
By VTuber NewsDrop編集部 (2026/1/6)

VTuber NewsDropではその年を彩ったVTuber界の重大ニュースを振り返るとともに、翌年の業界動向を予測する企画を毎年行っている。本記事では、今後12か月のVTuberシーンに何が待ち受けているのか、その見通しを示す。
今回の2026年版では、NewsDrop編集部からClawmaster、Madekuji Masamune、Teddy Cambosaによる分析、さらにStreams ChartsのプロダクトマネージャーであるNazar Babenko氏による見解も掲載。VTuberにとっても共感できる、多角的なトピックを網羅している。
2026年の業界展望
ビジネスとしては成熟期、しかし依然として「ニッチ」な存在か
2026年のVTuber界は運営面では進歩する一方、文化的にはまだ完全に受け入れられていない状態にあると予想される。一方でインフラ面は世間の認識よりも速いスピードで安定した。
Streams Chartsはシーズンレポートを通じ、VTuber界の現状を「成熟した、データ主導のグローバル産業へと進化した」と分析している。
Babenko氏はVTuber NewsDropに対し、デビュー・卒業(引退)・事務所再編・長時間耐久配信などを、単なるコミュニティ内の話題ではなく、総視聴時間・最大同時接続数・プラットフォームシェアといったマーケット指標における測定可能な転機点として扱っていると語る。
「我々の分析では、これらのデータを視聴者の行動やチャンネルの成長、そしてプラットフォームと事務所間のパワーバランスと常に結びつけています」とBabenko氏は付け加えた。
一方、Clawmasterは次のように見通す。
「残念ながら、VTuberはいまだに非常に新しく、配信文化の中でもきわめてニッチな存在であるため、しばらくの間は下に見られ続けるでしょう。その傾向は2026年も続くはずです。アニメが今のように受け入れられるまでに時間がかかったのと同じです。
アニメが人々に受け入れられ、奇異の目で見られずに楽しめるようになるまでには非常に長い時間がかかりました。VTuberは今まさにその段階にあります。時がたち、VTuberから面白いコンテンツが次々と生まれるにつれ、より受け入れられるようになります」。
今日、NetflixやCrunchyrollのような配信プラットフォームのおかげでアニメはメジャーな存在となり、その人気は『チェンソーマン レゼ篇』や『「鬼滅の刃」無限城編 第一章 猗窩座再来』といった劇場作品によって維持されている。
Teddyも次のように指摘する。
「VTuberを起用したマーケティングキャンペーンはブランドにとって依然ニッチで、主に国内向けに留まるでしょう。もしVTuberとのコラボに挑戦するブランドがあるとすれば、スタートアップ企業か、かなりニッチな顧客層を持つ企業になるはずです」。
● VTuberと金融機関とのコラボを想像できるだろうか? 日本ではすでにホロライブとみずほ銀行、にじさんじと三菱UFJ銀行のコラボ事例がある。
● こぼ・かなえるを起用したHonda BeATのYouTube受賞キャンペーンやドジャースタジアムでの「ホロライブ・ナイト」に続く、グローバル規模のVTuber × ブランドコラボは何になるのだろうか。
緩やかだが着実な成長
Babenko氏はまた、2026年のVTuber業界は「緩やかだが着実な成長」を続けると見ている。
「2025年のデータ、特に総視聴時間5億時間超という節目を踏まえると、再び爆発的なブームが起きるというよりは、緩やかながらも着実な成長になるでしょう」。
もし視聴者数が増えるとすれば、それはまったく新しい視聴者の流入ではなく、コンテンツ量の増加や耐久配信(サバソン、Subathon)、大型デビュー、クロスプラットフォーム企画といった、より構造化されたイベントによるものだとBabenko氏は予測する。
「ランキング最上位は比較的安定する一方で、中堅層が厚くなっていくでしょう。特に英語圏や非アジア圏のクリエイターでは、すでに専用の市場レポートを出すだけの需要が見えています」。
日本は依然としてVTuberの中核市場だが…
VTuberの中核市場は依然として日本だが、そのシェアは「CHZZK(韓国)のようなローカルプラットフォームの台頭や、事務所の合併・拡大によって、米国、韓国、その他の地域に徐々に移っていくでしょう」とBabenko氏は結論づける。
ここ数年、日本企業がM&Aや海外拠点設立を通じてグローバル市場に進出する例が増えている。COVER USAや、Brave groupによるStelLive買収がその例だ。
日本テレビ傘下のClaN Entertainmentも2025年にグローバル展開を開始し、Anime ExpoでグローバルVTuberプロジェクト「IZIGENIA」を発表している。
Madekujiはこう述べる。
「日本のVTuber市場はすでに成熟しており、生活の一部として受け入れられています」。
日本では、VTuberは配信だけに留まらず、ラジオやテレビにも登場し、2025年のMusic Awards JapanではトップVOCALOIDプロデューサーと並んでノミネートされている。
「日本では、VTuberはすでにあらゆる従来メディア・新興メディアに進出しました。そういう意味では、これからは他国が追いつく番です。特に、ホロライブが欧米での展開を強め、Phase Connectが新たな視聴者にリーチしている今がそのときです」。
カナダのVTuber事務所Phase Connectは、2024年1月にKALEiDOブランドで初の日本人タレントをデビューさせ、今年で2周年を迎える予定だ。
VTuberは他のJ-POP分野と融合していく
Madekujiは続けて、「日本による欧米企業の買収や、日本のポップカルチャーへのさらなる投資は、VTuber文化が欧米へ広がっていく兆しでもある」と述べる。
VTuberはアニメ・漫画・ゲーム・コスプレ・トレーディングカードゲームなど、他の日本のポップカルチャーと適応・融合することができるという。
● その一例が、GENDAの北米展開だ。GENDAは2025年4月、Player One Amusement Groupを完全買収したことをきっかけに北米進出を本格化させた。Player Oneはアミューズメント施設の運営だけでなく、『maimai でらっくす』や『太鼓の達人』などのアーケード筐体の販売代理店でもある。
● ホロライブがラウンドワンのアミューズメント施設と行った数々のコラボレーションや、最近ではビアードパパと行ったコラボも忘れてはならない。これらは両方とも米国で存在感を増している日本ブランドだ。
注視すべきポイント
Revenge of the Timeline: a comprehensive but not exhaustive chart of VTuber agencies and indie organisations up to the end of August 2025
byu/EnclavedMicrostate inVirtualYoutubers
2026年の企業系VTuberに関する予測
昨年公開した2025年総括の記事を読んだ方なら、我々が企業系VTuberについてくわしく論じたことを覚えているだろう。その議論を本稿でも続ける。
Streams ChartsのBabenko氏は、インディーズVTuberや新興組織の存在感が着実に重みを増す一方で、エコシステムの頂点は依然として企業系が占めるだろうと示唆している。
「VShojoの崩壊と閉鎖、Sameko Sabaのような大型デビュー、そしてCOVER USAを通じたホロライブの拡大といった出来事は、業界が頂点では統合を進めつつ、中堅層やロングテールでは多様化していることを物語っています」。
一方で彼は、企業系VTuberにおける不安定さが今後さらに増す可能性にも言及する。
「VShojoの閉鎖が、最後の大きな構造的ショックだとは思えません。強力なインディーズVTuberや小規模事務所の台頭が続くなかで、我々の分析やレポートもそうした存在をより強調する必要が出てくるでしょう」。
Madekujiは、よりストレートな表現で現状を語る。
「言葉を選ばずに言えば、今の企業系VTuberは“詰んでいる”状態です。例外はありますが、NIJISANJI ENの苦戦やホロライブで相次いだ卒業を見れば、企業系VTuber事務所は一度立て直す必要があります。
とはいえ、この業界は十分に長く続いてきたため、特に日本においては、会社を渡り歩いたり、自らVTuber事務所を立ち上げようとする人材も増えています」。
Clawmasterは次のように予測する。
「2025年と同様、資金不足で事業を継続できず、閉鎖に追い込まれるVTuber組織が2026年も山ほど出てくるはずです。過去の事例が示すとおり、安泰といえるVTuber組織はごくわずかでしょう。
事務所の縮小や合併が進むことで、2026年はVTuberユニットがさらに増えると見ています。VShojo閉鎖後に生まれたBeastiezやDensetsu.EXE、そしてVchiBan!のように、すでに一定の成功を収めているグループもあります。
また、シーンにはさらに多くのインディーズVTuberが現れるでしょう。元企業勢で、なおかつ一定のファン層を持っているVTuberであれば、独立後も問題なく活動できるはずです。これは過去2年間でも実証されています」。
Teddyもこう断言する。「2026年、企業系VTuberは“生き残れるか”だけでなく、“他とどう差別化できるか”を証明しなければなりません」。
企業は自分たちのメイン視聴者がグローバルなのか地域特化なのかを明確にし、VTuber界全体に広がる“メタ疲労”(コンテンツやデザイン、創作フレームワークなど)を打破する必要があるだろう。
総じて、企業系VTuberは再び厳しい一年を迎えることになる。適応できない中堅以下、あるいは資本力の乏しい事務所は崩壊リスクを抱え続ける一方、多角化に成功したトップ事務所は生き残り、権力をさらに集中させると予測される。
他方では、2023年に設立されたV-DereやVchiBan!のように、「タレント主導の共同組合」の存在も注目される。
「事務所による管理」から「個人勢を支援するエージェンシー」へ
Teddyは次のように予測する。
「多くのVTuberが独立を志向するなかで、ビジネスやイベントの機会だけを管理するUTAのようなタレントエージェンシーと提携するVTuberも増えるでしょう」。
昨年、複数の事務所トラブルを目の当たりにしたことで、VTuber自身が活動の自由度をより重視するようになると見られている。
「2026年における“独立”とは、事務所と完全に縁を切ることではありません。裏方業務を事務所に任せつつ、VTuber本人のキャラクター性や創造性を前面に出す形です」。
これは、VTuber個人を舞台裏でサポートするマネージャーの存在とは別の話だ。
2026年だけに限らず、将来的には日本でも同様の動きが広がる可能性がある。だが、それが今年起きるかどうかは、日本政府がクリエイター支援をどこまで進めるかしだいだ。
VTuber活動は「高コスト化」か「高クリエイティブ化」かになる

Clawmasterは次のように予測する。
「米国経済の中で生活している人々にとって、2026年に向けて誰もがさらに財布の紐を締めることになるでしょう。その結果、クリエイターがVTuberと仕事をする機会は減り、発注価格もいずれ見直しが必要になるかもしれません。
ただし、仕事そのものがなくなるというわけではない。今後この業界で仕事を得るうえでは、『何を知っているか』よりも『誰を知っているか』が重要になるかもしれません」。
もうひとつ注意すべき点として、PC周辺機器の価格上昇が挙げられる。AIが一般化するにつれ、需要増と供給鈍化により、メモリ価格も上昇している。
Madekujiはこう見る。
「この分野に参入するVTuberが減るかもしれません。テック業界の状況は、回復に向かう前に一度さらに悪化するでしょう。そうなると、VTuber関連の技術を揃えるのが今より難しくなります。
つまり、新規参入を望む人々にとっては“新しい血”が入りにくくなり、機材のアップグレードができずに引退していくVTuberも出てくるということです。
ハードウェア側が(Steam MachineやSteam Frameのように)進化するか、あるいはソフトウェア側が(必要スペックの引き下げや最適化などで)妥協する必要があります」。
THE MODEL REVEAL!
— Cherry🍒🍋FEB 21 REDEBUT (@ch3rrylem0nade) December 9, 2025
🍒
Edited by KumoKai
🍋#ch3rrylemonade #vtuber#envtuber #twitchstreamer pic.twitter.com/bjhfRjZap3
一方で、VTuberはよりクリエイティブになる可能性もある。
Clawmasterは言う。
「VTuber視聴者というニッチな層を狙うのではなく、他の配信者を見ている一般層に向けて、別のアート表現を使いながらVTuber活動に挑戦する人が増えるでしょう。昨年TheBurntPeanutが大きく伸びたことも追い風になります」。
Vupechatはこの流れを受け、「Everything-Tuber」機能をリリースした。VTuberたちの間ではこの機能について、VTuber活動の敷居を下げる手段として支持すべきか、それとも既存VTuberへの追い打ちになるのかで意見が分かれている。
また、これ以前にもShindigsは2023年の時点で、VTuber・実写配信者を問わないクリエイティブな配信事例をまとめて紹介していた。さらにSIGGRAPHでも紹介されたWarudoは、すでにさまざまなプロジェクトで活用されている。
AIの進化に伴い、VTuberと視聴者はより明確な線引きを迫られる

メモリ価格の高騰以外にも、生成AIへの依存が進むことは、無限の創造性を持つはずのVTuber文化にとってより多くの弊害ももたらす。
● VTuberやファンはAIアートの不自然さを引き続き見抜くだろうが、配信用チャットボットやクリップ提案ツールなど、AIを使った一部のツールを支持するかどうかで意見が割れる場面も出てくるだろう。
● X(旧Twitter)上でのコンテンツ表示、文脈理解、翻訳においてGrokが影響力を強めていくことにどこまで寛容でいられるか。
● 自分のコンテンツが誰かのデータセットに取り込まれる可能性を考え、Xに留まるかBlueskyへ移行するかをあらためて検討するか否か。
いずれにせよ、VTuberは他のクリエイターたちと同様、不適切・違法な生成AI利用による盗作や中傷に対して、引き続き声を上げていくはずだ。
