【VTuber業界総括2025】Part 1:企業系VTuberを取り巻く厳しい現実

昨年がおおむね厳しい年だったとすれば、今年もまた苦難の一年だった。パート1では、企業系VTuber業界における2025年の主な出来事を取り上げる。

By Jay Agonoy (2025/12/16)

アイキャッチ:VTuber業界総括2025 Part 1
Note

本記事は海外のVTuber専門Webメディア「VTuber NewsDrop」の記事を翻訳したものです(許諾済み)。


VTuber NewsDrop編集部は、2025年に起きた500件以上のニュースをまとめてリストアップ(※1)。この膨大なリストに加え、本メディアが制作してきた数百本の記事や動画を集計・分析し(※2)、この一年の全容を明らかにした。

3年前から兆候はあったが([1][2][3])、それでも私は企業系VTuber業界に好転の兆しがあると期待していた。しかし今年のリストを確認した結果、残念ながら状況はほとんど改善しなかったと言って差し支えない。

企業系VTuberの世界は、もともと沼地のような環境の中で常に険しい道程を歩んできた。いま問われているのは、事務所はどうやって生き残るのか、そして内外からの強い圧力に押し潰される前に、どれくらい長く持ちこたえられるということである。

以下は私の観察に基づく、2025年の企業系VTuber業界の姿である(※3)。


【注】
※1:本記事の初版は12月16日に公開されたが、必要に応じて今後も改訂される可能性がある。

※2:本記事のアウトライン作成にはChatGPTやClaudeを使用したが、本文の大部分は筆者自身が執筆。最終的に4795語を超えた。

※3:冗談抜きで、今年は一度に把握するには情報量が多すぎる。

Brave groupはグローバルVTuber事業の主導権を失いかけているのか?

我々が今年注視している企業のひとつであるBrave groupを例に挙げよう。

2024年のNewsDropのインタビューでは、同社がVTuber業界のトップを目指しているのは明らかだったが、グループ内部での一連の動き、そして資産の動向は、Brave groupの先行きに不透明感を漂わせている(※4)。

● Brave groupは資産の統合を進めている。まず子会社ENILISがbrossomを買収し、ブランドはそれぞれ独立したまま維持した。その後、Neo-Porte(ネオポルテ)StelLiveを買収している。

● ヨーロッパでは事業が低迷。globieでは多くの問題が発生し、1月のピッパ・ペブルスワースの脱退、2月のタレント2名の契約解除、8月にはさらに5名が卒業を発表。その後、年末までに事業を終了する決定がなされ、残ったタレントはインディーズVTuber(個人勢)として活動を継続することになった。

● 米国でも状況は芳しくない。年初、Brave group US所属の一部タレントが「不正行為の疑い」を理由に、YouTubeの収益化を停止された。これを受けてV4Miraiidolの両グループはYouTubeに対し、状況の再調査を求める公開要請を行った。

 ● 米国における資産の大部分は新設会社FTW Entertainmentへと移管された。「From Tokyo to the World」の略であるこの新会社は、Brave group米国法人の元CEOである林宣多氏が率いている。

  ● 男性グループNLiTE、ChromaSHIFTへとブランド変更された旧idol、そして技術ソリューション提供企業のOshiLiveはFTW傘下となり、V4Miraiは引き続きBrave groupの管轄に残っている。

 ● 2025年にはYumi the WitchとKou MariyaがV4Miraiを離脱した。しかし、当時インディーズVTuberだったMariya本人は活動を続けたい意向だったという。

● 中国ではVSPO! CN(卟啵电竞project)が10月15日に中国での事業を終了。残ったタレントはMUGEN LIVEに移籍した(※5)。

 ● 中国ではまた、男性グループEGOUSも10月末までに活動を終了。デビューから7か月と4週間後のことだった。理由について、公式発表を引用したメンバーは「スタッフ不足、紋切り型の言い回しや文化的な誤解が文化的な誤解が原因で、タレントと運営の間で絶え間ない摩擦が生じていた」と述べている

● タイのAStars Productionでは、Amakaraの残存メンバーはジア・シルフ(Zia Sylph)のみ。一方で市場は見出せているようで、Chrono Prince所属の男性VTuberは現在も活動を継続している。第2世代としてShishiou SeitoとHajime Rei(6月7日デビュー)、Yasou Azrael(9月27日デビュー)の3名が発表された。

 ● グッズ事業は好調のようで、昨年9月にはグッズストア「colleize(コレイズ)」の店舗をバンコクにオープンしている。

● 一方、東京本社では通常通りの事業運営が続いている。大阪に支社を設立し、企業サイトでは継続的に最新情報を発信している。

 ● 超銀河レコードが1億円のシード資金を調達し、RIOT MUSICからスピンオフ。Brave global capitalは既存株主の一社として、引き続き同社を支援している。

 ● ぶいすぽっ!は日英中タレントが集結した「ぶいすぽっ!フェス2025」など、節目ごとに成功を収める一方で、同社は所属タレントに対する誹謗中傷や権利侵害の監視も継続。実際、日本の所属タレントの性的イラストを多数販売していた人物と示談が成立している。

 ● Brave groupはjig.jp、およびカカオと提携。

 ● Brave group直下に、七乃羽すずと赤彩みあによるVTuberユニット「すずみあ」が結成

 ● 2023年にBrave groupが買収したHIMEHINA(ヒメヒナ)は、今年の大型ライブ「LIFETIME is BUBBLIN」で大きな話題を呼び、来年にはアジアツアーも予定されている。

  ● Anime Festival Asia Singapore 2025ではライブの録画とSNSアップロードが許可されたため、彼女たちのシンガポールデビューを映像で観ることができる。


【注】
※4:Braveグループ内に知人はいるが、2025年の総括記事で彼らを取り上げることは誰も知らなかった。

※5:可能性は低いように見えるかもしれないが、すでに同名の大規模eスポーツ組織が存在していることも状況を複雑にしている(同組織は自社の再編を経て現在はHero Esportsとして知られている)。

グリーホールディングスのVTuber事業(2025年)

Vebop Project

● グリーホールディングスは従来のメタバース事業を「VTuber事業」へと改称。「プラットフォーム事業」と「プロダクション事業」の2部門に再編した。

 ● 2026年6月期第1四半期(2026Q1)の決算説明会では、この名称変更は同社の現在の事業内容をより正確に反映するために行われたことが説明された。

 ● グリーは誰でもカスタマイズ可能なバーチャルアバターで配信できるスマホアプリREALITYを運営するほか、REALITY Studios傘下にFIRST STAGE PRODUCTION、すぺしゃりて、RK Musicを擁する。

● Specialite EN(すぺしゃりての英語部門)が10月中に閉鎖。残ったタレントはインディーズVTuberとして活動を継続している。

● 10月、元VEE所属タレントの安心院みさがすぺしゃりてに加入

● Vebop Projectの運営移管:viviONは2023年、Brave groupの元子会社であおぎり高校を運営するクリエイトリングと合併している。それから約2年半後、そのviviONにREALITY Studiosが手がけるVebop Projectの運営が移管された。

 ● viviONはゲオホールディングス傘下の企業。ゲオホールディングスは国内外でメディア・衣料品・アクセサリー関連など、複数のグループ企業を傘下に抱える。viviONが運営する別の事業には、電子コミックストア「comipo」がある。

● 話をGREEに戻すと、同社はVTuberプロダクション事業について「2026年度には月次ベースで黒字化し(※6)、2027年度には通期での黒字化を達成する」ことを見込んでいる(※7)。


【注】
※6:「企業が黒字であるとは、利益を上げている状態、より具体的には、すべての費用を差し引いた後でも正の利益を生み出していることを指す」[Investopedia

※7:グリーホールディングス「2026年6月期第1四半期決算説明会(2025年11月6日開催)の主な補足説明及び質疑応答の要約」[PDF、Q6を参照]

FIRST STAGE PRODUCTION:二面性を持つ物語

我々が注目しているもうひとつの事務所がFIRST STAGE PRODUCTION(通称いちプロ)である。現在、この事務所には対照的な二つの側面が見られる。

 1. 本拠地となる日本では、2023年の設立以降、タレントの入れ替わりが目立つ。本稿執筆時点では、1期生および3期生のタレントはすでに全員離脱している(※8)。

 2. 一方で、男性のみで構成された英語圏支部は非常に好調。2024年1月の立ち上げ以降、すでに3世代がデビューしている。12月14日に配信されたオンラインコンサート「Skyward Fates」では、Avallum、Ravanis、そして最近デビューしたLamentusのメンバーが2Dモデルで登場。出演タレントが一堂に会した(※9)。

この総括記事が最初に公開されてから数日後、同事務所はNix Voltareを契約解除し、その決定に至った要因を列挙して発表した。なお、Nixを担当していた人物は公式発表が出る以前から、FIRST STAGE PRODUCTION所属としての立場とは別に発言を行っていた。


【注】
※8:これは、いちプロの日本人タレント36名(VTuber Wikiの掲載情報より)のうち21名にあたり、離脱率は約60%に近い。

※9:当時参加できなかったNix Voltareを除く。

NEXAS AcademiaとAniLiveの終焉

NEXASはわずか1年の活動期間で閉鎖に追い込まれた。これは不運な出来事であり、その背景には提携プラットフォームであるAniLiveとの関係があったと理解している(※10)。

● AniLiveのローンチは当初から厳しいスタートだった。アルファ版の段階では、デビューしたタレントと交流できたのはiOSユーザーのみだったからである。

● NEXASはタレントをまずAniLive向けに募集し、一定期間後にTwitchやYouTubeへ移行させる方針だった。一方でAniLive側も、独自に配信者を招いて同プラットフォームでの配信を試してもらっていた。両者とも非常に速いペースで展開を進めた結果、足並みを崩し、最終的には双方とも今年初めにサービスを終了することとなった。


【注】
※10:モバイル配信の拡大を見込んでAniLiveとIRIAM USを比較する特集記事を準備していたが、前者が縮小に向かったため実現しなかった。

SUPER STATE HOLDINGSの再編とMBO

さらに我々が継続的に注視してきた企業が、「すとぷり」の運営会社STPRを含むSUPER STATE HOLDINGSである。

VTuber事務所のボンド(bondLive)、lucid Corporation、AniToneなど複数の企業で構成される同組織は、さらなる協議を経て、9月に大規模な組織再編を発表した。

● 持株会社が保有していたlucid Multimediaの持分は経営陣へと譲渡され、同社は再び独立企業となった

● ボンドを含む6社は現在、オカザキホールディングスの傘下にある。これ以前にも、ボンドは別企業である0rigina1から約200人のVライバーを吸収していた。

VShojo、突然の崩壊

アイアンマウスのVShojo離脱発表配信

2010年に設立され、「タレントファースト」を掲げる米国のエージェンシーVShojoにとって、Ironmouse(アイアンマウス)は間違いなく支柱的な存在だった。VShojoは当初、VTuber業界の規模の大きさをブランドに理解してもらうことを目的として立ち上げられた。

● そのIronmouseが突如グループを離脱。彼女の指定した慈善団体である免疫不全財団(Immune Deficiency Foundation)に寄付されるはずだった50万ドル超の収益を、VShojoが十分に引き渡していなかったと公表した。この時点で、経営陣から何らかの発表が出されるのは時間の問題だった。

● CEOのジャスティン・イグナシオ(Justin Ignacio)は3日後に「VShojoは失敗した」と表明。最終的には残っていたタレント全員がこの不名誉なエージェンシーとの関係を解消した。我々は現在、同氏による破産申請を巡る最新動向を注視している。

VShojoは、Projekt Melody、Zentreya、kson、Matara Kan、Michi Mochievee、Kuro Kurenai、そして最近ではAmaLeeといったトップVTuberをマネジメントしていた。

しかし崩壊後になって初めて、同社が数多くの不祥事を抱えていたことが明らかになった。

● 複数のインディーズVTuberが「自分たちは本来VShojoに所属し、2つのユニットでデビューする予定だった」と名乗り出た。

● 日本支部のユニットNOVAは、ユニバーサル ミュージック グループとの契約を獲得し、今年のAnime Expoで楽曲を初披露していたが、その後の展開は一切なかった。

● 今年5月に事務所を離れたMatara Kanは、「業界の多くはVShojo内部で起きていた問題を知っていた。最後まで知らされていなかったのは私たちタレントだった」と語っている

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