にじさんじの物語は続く
にじさんじおよびNIJISANJI ENは、2025年も引き続き活動を続けている。ライトなファンであっても、日本ではさまざまな動きが起きていることに気づくだろう。
● MECHATU-A(めちゃつえー)がにじさんじフェスでアルバムを発表。発売週にBillboard JAPANの週間ダウンロードチャートにランクイン。
● 3月にはROF-MAO(ろふまお)のアルバム『MOMENTUM』が日本レコード協会からゴールドディスク認定。
● スーパーエリートライバーの一橋綾人と五木左京のほか、「今宵、××と夢を見る。」(よいゆめ)とSplareという2つのユニットがデビュー。
● 渚トラウトと雨森小夜が配信活動に復帰。
● さらに、2021年6月30日に卒業した鈴原るるが12月23日に配信へ復帰する予定だという情報も。これは同事務所にとってもレアなケースである(※11)。
● 今年初めには加賀美ハヤトとのMR体験(Mixed Reality、複合現実)が大成功を収めた。
● にじさんじライバーのましろ爻、家長むぎ、来栖夏芽の各プロジェクトも相次いで結実。来栖夏芽の『人外教室の人間嫌い教師』は来年テレビ放送予定で、ましろ爻のホラー配信は同じく来年に漫画化される。家長むぎは現在ウェブマガジンでエッセイを連載中。
● 2025年もアニメ楽曲を担当するタレントが登場。樋口楓と叶は『Yummy Yummy』(『日本へようこそエルフさん。』ED)、緑仙は『確証論』(『ネクロノミ子のコズミックホラーショウ』OP)(※12)、Nornisは『Prologue』(『素材採取家の異世界旅行記』OP)を担当。
にじさんじは2024年に傷ついた評判の影響からまだ立ち直りきってはいないが、少なくとも表面的には緊張感が和らいできていると言ってよいだろう。
● アスター アルカディア(Aster Arcadia)の離脱やトゥイスティー アマノザコ(Twisty Amanozako)の契約解除について、公式な情報はあまり出ていない。しかし、これらは2024年12月に同社が依頼した、セクシャルハラスメントや外部への無断情報漏洩問題に焦点を当てた第三者による独立調査と関連づけて考えることができる。現在、両者のチャンネルにはコンテンツが表示されていない。
● 4月30日のアイク・イーヴランド(Ike Eveland)の突然の卒業は、Quilldren(ファンネーム)にとって衝撃的だった。「メンタルヘルスが大きな要因でしたが、同時に、NIJISANJI ENライバーとしての責務を果たせなかったことも自覚しています」と、彼は最後の手紙に綴っている。アイクは、2024年の3Dお披露目で初音ミクをゲストに迎えた最初のNIJISANJI ENライバーとして記憶されるだろう。
● ファルガー・オーヴィド(Fulgur Ovid)の卒業はゆっくりとしたものだったが、穏やかで心温まるものでもあった。Fuuちゃん(愛称)は卒業発表から卒業配信の瞬間まで、同僚やComfydants(ファンネーム)に丁寧に準備させてきた。「この3年間は人生で最も幸せな時間で、これまでで最高の思い出をいくつももたらしてくれました」と、『Legatus 505』の小説作家でもある彼は記している。
ANYCOLORのグローバルVTuber事業において明るい動きがあるとすれば、新ユニット「BY THE BEAT」の登場と、にじさんじ 7th Anniversary LIVE 「OVERTURE」の昼ステージでENタレントの一部が初の3Dライブを行ったことだろう。同ライブはENのタレントがステージに立つ貴重な機会だったこともあり、日本・海外双方のファンの記憶に残っている。
しかし、にじさんじにはまだ確認すべき課題が多く残っている。以下がチェックリストに加えたい項目だ。
● ライバーのなかには文脈から外れた発言(あるいは想定ファン層から外れた発言)をしてしまう人がいるが、これはどのVTuberにもよくあることだ。でびでび・でびるは通勤に関する発言(自身キャラ設定を保ったうえでの発言ではある)で炎上してしまった。
● イベントチケットの販売を担当する楽天に対しても、事務所はより徹底した確認を行う必要がある。にじさんじフェスでの壱百満天原サロメの公演では、楽天側の不備により集客不足に陥りかけた。結果的にはサロメの同僚たちが本番前に盛り上げを手伝い、事なきを得ている(※13)。
● ライブイベント(にじさんじフェス)(※14)や音楽ゲーム(『maimai DX』)(※15)など、楽曲使用に関するライセンス問題は依然として障壁となっている。
【注】
※11:にじさんじにおける「卒業からの復帰」は今回が初ではない。2018年11月に卒業した笹木咲は、2か月後の翌年1月に復帰している。
※12:同イベントにはオリバー・エバンスもカメオ出演していた。
※13:彼女のコンサートは、近いうちにBlu-ray化される予定だ。サンプルはこちら。
※14:Stagecrowdで配信を視聴していた人であれば、「著作権上の理由により●●の楽曲は配信されませんのでご了承ください」という表示に見覚えがあるだろう。
※15:『はんぶんこ』の楽曲は、米国向けのmaimai DX筐体では利用できなかった。三枝明那のサイドイベントでは修正されるまで同楽曲が使用されていた。
ホロライブは“避け続けてきた問題”にどう向き合うのか
ホロライブプロダクションがVTuberの認知度を世界規模へと広げるために最善を尽くしてきたことは疑いようがなく、その結果、非常に高い評価と地位を築いてきた。しかし、その運営会社であるカバーも、批判や経営上の不備から免れているわけではない。
● 日本の公正取引委員会は、クリエイター産業に関わる企業に対し、指摘されている懸念点に対応しなければ相応の措置を取る、という警告を出し始めている。これは、日本政府がクリエイターの労働環境改善を支援する姿勢を示している流れの中での動きだ。
● その対象となった企業のひとつがカバーであり、公正取引委員会の勧告に加えて、国内のフリーランス新法への対応を求められた。
筆者は以前、「ホロライブは終わりではないし、これからも存続する」と意見を述べたが、その記事を投稿した後に起きた最近の出来事には、不意を突かれた思いだった。
企業勢VTuberの世界では、過重労働がすでに構造的な問題になっており、たとえ改善策が講じられたとしても、その修復には時間がかかり過ぎ、手遅れになるだろう。天音かなたが置かれた状況を、筆者はそのように捉えている。
“PP天使”こと天音かなたは、まるで外科手術のような、非常に緻密で慎重な形で卒業を発表した。
- 同僚の配信と被らないよう、日本時間17時に配信開始
- 卒業発表を事前に知っていた人は関係者以外、同僚にもいないことを明言
- 共有の際は文脈が正しく伝わるよう、アーカイブ配信の該当部分へのリンクを添えるよう要請
- 悪意のある編集や断片的な切り取りをしないよう要請
- 海外の視聴者が多いことを踏まえ、英語字幕も表示
- さらに、日本語と英語の両方で要点をまとめた文書を投稿
カバーは昨年4月に始まった第10期事業年度に合わせて、すでに組織運営体制の変更を行っている。また、定款変更についても株主の承認を得ており、これによりhololive RECORDSの立ち上げと音楽事業への正式参入が可能となった。
● hololive RECORDSがどのような結果を出すのかを語るには、まだ時期尚早だ。ただし、事務的なミスには十分注意する必要がある。
ホロライブ運営はまた、キャラクターのビジュアル化の過程でイラストレーターが創作の自由を行使しすぎ、自身のキャラクター解釈をタレント側に強く押し付けるという問題にも対処した。
● この件はカバー、当該タレント、イラストレーター、そしてファンの間に誤解を生む結果となった。しかし、同社はこの問題を自らの責任として整理・対応する姿勢を示している。
● この混乱の責任をタレント本人に求めるファンは一人もおらず、現在もそのタレントによるエンターテインメントを楽しみ続けている。
同社は、もう一つの重点プロジェクトであるホロアースにも取り組んでいる。ホロライブのタレントを通じて、ファンをメタバースプラットフォームへ招き入れることには成功している。
一方で、日本のユーザー特有の感覚に起因する、NPCの不適切なデザインという問題に対応しなければならなかったのは意外だった。
AKA Virtualの近況は?
東京を本拠地とし、インドネシアにも活動拠点を持つAKA Virtualは、見る立場によって順調に進んでいるとも、大きな転換期にあるとも言える状況が続いている。
● MagniVは、「ファンがグループの“5人目のメンバー”になる」というユニークな形で関わることを可能にしている(※16)。
● AKA Virtualの人気インドネシアユニットSOL.4CEは、専門的なキャリア形成の一環として契約が終了した。4人のメンバーは今後、事務所から独立して活動を続ける。
● SOL.4CEは活動を通じて大きな成果を上げており、コンセプトカフェの開催や、リーダーのHarris Caineが「Tako Awards 2025」のVTuber of the Yearに選ばれるなどの実績を残した。
● 英語圏では7月にSae Saotome(早乙女冴)が所属ユニットPerfruorから離脱。「AsterisK Amusement Park」は持続不可能になった。
● 「フェア」を運営するための「企業的な後ろ盾」がなければ、スタッフは自力で生計を立てるしかない。Perfruorの残りのメンバー、Vierra Vanilla、Dolly Doppel、Pirouellaは9月10日付で卒業した。
● Saeは現在、英語圏で唯一のタレントとしてAKA Virtualに在籍し続けている。
● AKA Virtualはまた、JKT48のバーチャルユニット「JKT48V」のアイドル活動も手がけている。第1期生はAnime Expo期間中に開催されたFantastic Realityコンサートに出演し、最近では第2期生もデビューした。
【注】
※16:VTuber、あるいはファンとして彼らの楽曲をカバーしたり、グループの一員であることについて投稿したい場合は、ぜひ私たちをタグ付けしてください。こちらからお伺いします。
事務所を騙った詐欺
● とある団体が、2023年11月にすでに閉鎖されていたブランド「Shirayuri Productions」になりすましていた。閉鎖済みの事務所とはいえ、このなりすまし行為を受け、同ブランドのCEOは名称およびビジュアルに関する権利を主張。その詐欺団体のDiscordサーバーに直接乗り込み、スタッフと話し合って問題を解決した。
● その詐欺団体はStarPulseVTやPixelPactVTと名前を変更したのち、最終的には姿を消した。
● 元VReverie所属タレントのX(旧Twitter)アカウントが「Lunova」という別の事務所に取得され、公式用途として再利用された。この行為はVTuber界隈では好意的に受け止められず、プラットフォームの利用規約に違反している可能性もある。同社は謝罪を行ったものの、その後の動きは今のところ見られていない。
その他の企業勢VTuber最新動向
● 韓国のVTuber事務所V&U Entertainmentでは、今年5人のタレントが事務所を離脱した。その発表に関する情報が、事務所およびタレントの同意なしに早期に公開されたこともあり、同社は注視されている。だが、表向きにはその後大きな問題は報じられていない。
● てらめたる学園は12月26日をもって解散予定。所属タレントのうち、幽ヶ浦もち、数多エニ、ノピ・テュルーペの3名は独立し、残る4名はクイズやなぞなぞを発信する日本のコンテンツグループ「QuizKnock」に迎え入れられる。
● バンダイナムコのVTuberユニットMEWLIVE(みゅ~らいぶ)は好調。夜羽咲クロネは複数の楽曲をリリースし、イベントでも存在感を示している。その他、Reφilm(レフィルム)は同僚の熊乃ベアトリーチェとともにタイのAniEXに出演、SZNO(スズノ)も近く新プロジェクトを控えている。
● Astra YonakaとAkihiro Tokisaki、神代りたは今年、lucid Multimediaに加入した。
● タイではLuminaプロジェクトが始動。Pixelaの再編に伴い、所属タレント9名のマネジメントを引き継いだ。その同日、Pixelaは重大な契約違反を理由に所属タレント1名を解雇している。
● VIVARIA Virtualは1月に4名のタレントがデビュー。8月にはカナダのAnimethonで初の大型コンサートを開催した。
● 再び日本に目を向けると、碧依さくらのVTuber事務所re;BONは今年すでに9名の新メンバーを加え、碧依さくら自身を含め総勢11名となった。
● 元VEE1期生の秋雪こはくはソニーミュージックのVTuber事務所を離れ、プロeスポーツチームREJECTのストリーマー部門に移籍した。
ここまでが2025年総括シリーズの第1弾である。今後は、イベント・新興テクノロジー・コミュニティ全体など、さらなるテーマを別パートで取り上げていく予定だ。
【2025/12/23更新】 EN部門で初のタレント契約終了を受け、FIRST STAGE PRODUCTIONの項目に新たな記述を追加
【2025/12/17更新】 その他の企業勢VTuber動向セクションに新規項目を追加し、あわせてGREEホールディングスのVTuber事業に関するセクションを拡充
※記事中で使用している画像は訳者が独自に用意したもので、元記事とは異なる場合があります。当翻訳記事のサムネイル画像および記事中画像はそれぞれIronmouse、天音かなたのYouTube配信サムネール画像、および各種プレスリリース素材から作成しました。


