Cellid、広視野角に対応したコンパクトなマイクロプロジェクターの開発に成功

FOV60°のウェーブガイドに対応した高精細AR映像の投影を実現

 ARグラス用ディスプレイおよび空間認識エンジンの開発を手がけるCellid(セリッド)は2025年6月30日、視野角(Field of View、FOV)60度のAR映像を映し出す、ARグラス用のマイクロ・プロジェクターの開発に成功したことを発表した。

Cellid ロゴ

 現在、ARグラス市場は黎明期にあり、通知・天気情報・翻訳・生成AIとの連携といった、実用性の高い情報表示(Information Display)用途を中心に市場が形成されつつある。

 これらのユースケースでは、比較的せまい視野角でも十分なユーザー価値が提供できることから、小型・軽量なデバイスが初期の普及を牽引する見込みだ。

 一方で、中長期的には、動画視聴や3Dコンテンツの利用、現実空間とのインタラクション(Spatial Computing)といった、より没入感の高い体験へのニーズが拡大すると予想されており、広視野角・高精細な表示性能の重要性は一層高まっていくと考えられる。

 Cellidが開発したマイクロプロジェクターは、従来の技術的制約を大きく超える広視野角・高光効率・コンパクト筐体を実現。ARグラスのユーザー体験を一段と高度化させると同時に、情報表示型から空間体験型への用途拡張を可能とし、今後さまざまな業種・サービス領域への展開が期待される。

開発の背景と特長

 Cellidはすでに、世界初となるFOV60°のARグラス用ウェーブガイドレンズを独自に開発している。

 しかし、FOV50°以上の広視野角で高精細かつ均一な映像が投影でき、メガネ型ARグラスのコンパクトなフレームに収まるマイクロプロジェクターの実用化は、長らく業界にとって大きな課題だった。

 マイクロプロジェクターは、わずかな部品のずれでも光軸が大きく狂うほど構造的に非常に高感度であり、とりわけ広視野角化においては精密なアライメント技術が不可欠だ。

 この課題に対し、Cellidは独自のバレル構造とアライメント技術を組み合わせることで、高い光学精度と広視野角を両立。これにより、コンパクトな眼鏡型フレームに組み込める形状を保ちつつ、高画質かつ安定した表示を実現した。

FOV30°(左)とFOV60°(右)の見え方の違いを比較した図
FOV30°(左)とFOV60°(右)の見え方の違い
RGBに対応に対応した映像出力の図
 R/G/Bに対応(ウェーブガイドを通してフルカラー合成に対応)

今回開発したマイクロプロジェクターの主な特徴

  • 通常の眼鏡タイプのARグラスにフィットする小型サイズ(Φ5.8mm x 5.8mm)で軽量化(0.3g)を実現
  • 小型サイズながらFOV60°の投影が可能(2025年に70°も対応予定)
  • Cellid独自の精密バレル構造により、ウェーブガイドに対して最適な入射角を選択でき、光学性能を向上

 Cellidは今後、光学性能・製造安定性のさらなる向上を図り、2025年中にFOV50°~ 70° ラインナップの拡充と量産体制の構築を目指す。

 ウェーブガイドに加え、広視野角に対応したマイクロ・プロジェクターも自社で設計・開発することで、それぞれを個別に設計・開発する場合に比べて、より高い光学性能と精細なAR画像の実現を可能とする。

 また、先日発表したソフトウェア補正技術と組み合わせることで、ユーザー体験をさらに向上させ、様々な分野におけるARグラスの実用化促進につなげるとしている。

Cellid代表取締役CEO 白神賢のコメント

 広視野角FOV60°に対応したワイド・マイクロ・プロジェクターの開発に成功したことは、ARグラスが様々なシーンで活用できるようになるための重要なマイルストーンだと捉えています。

 Cellidが培ってきた光学技術と設計ノウハウを結集することで、これまで困難とされてきた広視野・高精細・小型軽量を同時に実現しました。これは単なる技術革新にとどまらず、ARグラスのユーザー体験そのものを刷新するものと考えています。

 今後も、より多くの人々が日常的にARグラスを活用できるよう、必要とされる製品と技術の開発を継続してまいります。


【出典: PR Times

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