前年同期比67.4%減。一方でデバイスの平均販売価格は上昇
IT専門調査会社IDCは2024年9月16日、2024年第2四半期のAR/VRヘッドセット市場動向に関するレポートをリリースした。同レポートによると、2024年第2四半期の世界AR/VRヘッドセット出荷台数は前年比67.4%減を記録した。
ただし、これは市場が新しいカテゴリーである複合現実(Mixed Reality、MR)や拡張現実(Extended Reality、ER)へ移行する過程で想定されていた動きだとしている。一方で、Appleの参入やMetaのQuest 3などの高価格帯製品の影響により、平均販売価格は1000ドルを超えた。
市場シェアではMetaが首位を維持し、Appleが2位に浮上。ByteDance、Xreal、HTCが続く。Meta Quest 3やApple Vision ProはMR体験を普及させ、開発者のコンテンツ制作を促進しているが、利用者にとってはコストが高い点が課題だ。
IDCのモバイルデバイス調査担当リサーチマネージャーであるJitesh Ubrani氏は次のように述べている。
「MRが台頭するにつれ、純粋なVRヘッドセットは今後数年で消えていくことが予想されます。ブランドや開発者は、新しいハードウェアや体験を考案し、最終的にユーザーを拡張現実へと移行させる助けをするでしょう。
一方で、ERディスプレイは、現時点で大画面体験を提供すると同時に、近い将来にはAIやヘッドアップディスプレイを組み込むことで消費者の注目を集めることになるでしょう」。
また、IDCのAR/VR担当リサーチディレクター、Ramon T. Llamas氏は次のように述べている。
「ほとんどのARヘッドセットの平均販売価格は水準を上回りましたが、逆にVR・MR・ERヘッドセットの平均販売価格は概して低水準でした。
AppleのVision ProはMRヘッドセットの平均販売価格を引き上げましたが、MetaやHTCからの低価格デバイス登場により平均販売価格が大幅に上昇することはありませんでした。一方で、500ドル以下で販売されるVR・ERデバイスも数多く存在しました。
今後を見据えると、すべての製品において平均販売価格は下がると予想しています。
なぜなら、全体の市場はいまだ初期段階にあり、より高価な第1世代・第2世代のデバイスが多いため、アーリーアダプターが購入しても価格は高止まりするのです。マスマーケットに規模を拡大するためには、各メーカーは今後のデバイスで価格を下げる必要があります」。
IDCは今後の見通しとして、ヘッドセットの出荷台数が今年後半に再び成長へと戻り、前年比7.5%増加すると予測。新しいヘッドセットや製品の低価格化が、今年後半に期待される回復を後押しするだろうとしている。また、2024年から2028年にかけ、出荷台数は43.9%の年間平均成長率(CAGR)を示すと予測している。

※ IDCではAR/VRヘッドセットをAugmented Reality(AR)、Virtual Reality(VR)、Mixed Reality(MR)、Extended Reality(ER)の以下の4カテゴリで調査している。
- ARヘッドセット: デジタルコンテンツを現実の視野に重ねて表示し、3Dのオブジェクトを操作できるヘッドセット。使用されているグラスは半透明かシースルーになる
- VRヘッドセット: ユーザーの現実世界の視界を完全にさえぎり、デジタル世界を体験できるヘッドセット。基本的にVRヘッドセットを装着しているときは安全環境であることが求められる
- MRヘッドセット: VRと類似しているが、外向きカメラが備えられており、装着したうえでの外出も可能。完全没入型環境と、現実の中にオブジェクトを表示したり追加したりすることができる環境を切り替えることができる
- ERヘッドセット: 外部コンテンツの表示を提供する、シースルーまたは半透明のディスプレイを持つ。単眼であることが必須ではないが、単眼タイプの製品が多く含まれる
(出典:IDC)