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【IDC調査】 IDC Japan、2024年通年の国内AR/VRヘッドセットの出荷台数を発表

2024年のヘッドセット出荷台数は前年比14.8%減の48.6万台

 IT専門調査会社IDC Japanは2025年4月1日、2024年通年の国内AR/VRヘッドセットの出荷台数を発表した。IDCではAR/VRヘッドセットをAugmented Reality(AR)、Virtual Reality(VR)、Mixed Reality(MR)、Extended Reality(ER)の4カテゴリで調査している(※)。

図1:2021-2024年通年国内AR/VRヘッドセット市場の推移
(図1:2021-2024年通年国内AR/VRヘッドセット市場/出典: IDC)

 国内の2024年通年のAR/VR/MR/ERヘッドセットの合計は前年比14.8%減の48.6万台で、MR以外のすべてのカテゴリで対前年比大幅減となった。

 唯一、対前年比増となったMRで好調な出荷を支えたのはMetaの「Meta Quest3」。初代モデルのOculus Questの発売から約6年が経過しているが、ゲーム用途などで一定の市場を確立しているほか、最近では法人向け用途の開拓も進んでいる。

 一方、同じくMRカテゴリに含まれるAppleの「Apple Vision Pro」は、話題性の高いモデルではあるものの、高価であることから実際には法人向けを中心にした一部の出荷に留まった。また、Apple Vision Proを購入した法人も実際の業務に利用するというよりも研究開発目的での購入がほとんどであり、継続的な需要を見込むことはできないだろうと推測している。


 VRは、PSVR2の出荷が絞られてきていることもあり対前年比減。また、現在VRカテゴリに分類されているモデルの後継機種が販売される場合、今後MRカテゴリに含まれるようになると見込んでおり、VRカテゴリの予測出荷数は2026年以降ほぼなくなるとの分析結果になった。


 ARは、Microsoftに続き、成長が期待されていたMagic Leapも現在では事業のほとんどを停止中。将来予測においてもARカテゴリの今後の成長は期待できず、現状水準に留まると予想している。


 ERは対前年比減となったものの、XREALのデバイスを中心に一定の需要があるため、確かな市場が形成されつつある。今後も一定の成長が見込めるが、もっと安価なMRデバイスが出回った場合、ERデバイスの市場が淘汰される可能性はあるとした。


 以上を踏まえ、IDC Japanでは国内のAR/VRヘッドセット市場は2029年までに約38万台になると予測。IDC Japan、コンシューマーデバイス部門のマーケットアナリストである井辺将史氏は以下のようにコメントしている。

「かつてはスマートフォンの代替となるデバイスとして大きな期待を寄せられていたAR/VRヘッドセットだが、現時点でその成長は停滞している。AppleのVision Proが世間から大きな注目を集めたことで、新たな用途開発が促進され市場が発展することが期待されたが、既出の用途の域を出るものではなかった。

 ただ、現在では停滞しているものの、MetaやXREALなど一定の成果を残している企業もある。また、ヘッドセットを装着したことによる没入感は、ユーザーにとって新しい体験を与えるものであることには変わりない。この価値をより手軽に安価に体験できるようになれば、市場は劇的に変化するだろう」。

図2:2025年~2029年国内AR/VRヘッドセット市場予測
(図2:2025年~2029年国内AR/VRヘッドセット市場予測/出典: IDC)

※ IDCによるAR/VR/MR/ERの定義は以下のとおり。

  • ARヘッドセット: デジタルコンテンツを現実の視野に重ねて表示し、3Dのオブジェクトを操作できるヘッドセット。使用されているグラスは半透明かシースルーになる
  • VRヘッドセット: ユーザーの現実世界の視界を完全にさえぎり、デジタル世界を体験できるヘッドセット。基本的にVRヘッドセットを装着しているときは安全環境であることが求められる
  • MRヘッドセット: VRと類似しているが、外向きカメラが備えられており、装着したうえでの外出も可能。完全没入型環境と、現実の中にオブジェクトを表示したり追加したりすることができる環境を切り替えることができる
  • ERヘッドセット: 外部コンテンツの表示を提供する、シースルーまたは半透明のディスプレイを持つ。単眼であることが必須ではないが、単眼タイプの製品が多く含まれる

(出典:IDC