3Dライブ「壱星の音楽会」、実は開催できるかの瀬戸際だった 【翻訳転載】
だが、主催者のカイシックス・ウォーカー氏は配信を実現させると約束し、長年の夢だった「3Dライブの開催」という願いを叶えた。
By Jay Agonoy (2025/5/30)
VTuber NewsDropの「スポットライト」シリーズでは、オンライン・オフライン問わず、成功を収めたVTuberライブの舞台裏を取り上げている。そのひとつが、2025年5月18日(日)に配信された3Dライブ「Issei On Live(壱星の音楽会)」だ。
この3Dライブ開催までの経緯を見守ってきたファンの多くは、主催者であるカイシックス・ウォーカー(Kaissics Walker)氏がこのオンラインライブを実現するまでにどれだけ苦労したか知っているだろう。そして、3Dライブが無事開催されたことに感謝していることだろう。
それだけでもう十分なのだが、今回、チーム・コムフィ(Team Comfy)に所属する友人の誘いを受け、カイ氏本人から今回の3Dライブについて語ってもらった。
長年抱き続けた願い
VRChatであれ他の手段であれ、VTuberが3Dライブに憧れるのは理解できる。我々はカイ氏に、このようなVTuberライブを夢見始めたのはいつごろなのか尋ねた。
「正直なところ、もうあまりに昔すぎて正確には覚えていないんだけど、おそらく一番印象に残っているのは2015年の『ニコニコ超パーティー』あたりかな?」
「ちょうど、『ボーカロイドがステージでパフォーマンスしているなら、今でいうVTuberみたいなのがいたらクールじゃないか?』って思っていた時期だったんだ。
それから2016年にキズナアイがデビューしてVTuberブームが始まって、少しずつ3Dコンサートの実現に近づいていった。特に3D技術が手に入りやすくなって、3Dモデルの作り方のチュートリアルが公開されるようになった時期からね」。
カイ氏はこの夢を実現するために、長い間努力を続けてきたようだ。カレンダーを見ると、もう10年も前の話になる。
「最近では3Dアセットを使った動画編集や3DMVを作る人が増えてきているよね。企業系VTuberが3Dライブをするようになって、元企業勢や個人VTuberもそれに続いてる。
でも、各パートにVFXやエフェクトが施されていて、しかも出演者にきちんとスポットライトが当たる、まるでMVみたいな演出の3Dライブは今までひとつもなかった。
だからこそ、3DMVが作れるなら、それを活かした3Dライブをやってみたらどうだろうって思ったんだ。現実のライブでは技術的な制約でできないことも、バーチャルならできる。その可能性をもっと活かすべきだと思ったんだ」。
我々はこれまでにSilvi Mikazuki、Kori-Oujo、Miya、歌乃パンドラといったアーティストのライブも見てきた。今回成功裏に終わった「壱星の音楽会」だが、出演者とスタッフを集めるきっかけになった具体的なイベントやライブなどがあるのか、カイ氏に訊いてみた。
「正直、『壱星の音楽会』をやろうと思うきっかけになったイベントやライブは本当にたくさんある。特に大きかったのはObake PAMさんのコンサートかな。彼女はライブをいくつもやっていて、いろんなクリエイターが参加できる場を提供してたから。
あと、チーム・コムフィが主催した『V-Muse』にもすごくインスピレーションを受けた。あれだけ大規模なイベントを開催して、しかもKLP48とミント・ファントームのコラボも実現してたし!」
こうしたライブやイベントをきっかけに、カイ氏は自身で3Dライブを開催したいと思うようになった。カイ氏が思い描いていた3Dライブは次のようなものだ。
1. さまざまなクリエイターやVTuber、Vシンガーが出演できる
2. 企業や元企業勢が主催するのではなく、規模に関係なく普通の個人VTuberでも主催できる
3. 同一プラットフォーム上で同じステージを共有し、出演者が順番に輝ける
「あと、僕自身は有名VTuberってわけじゃないけど、それでも他の人たちにスポットライトを当てるためのプラットフォームになりたいと思ったんだ。
彼らの存在や作品をもっと広めて、フォロワーやクライアントが増えてくれたらって。それくらい、彼らの才能ってまだまだ評価されてないからね! それが『壱星の音楽会』の出演者を招待した動機だったんだ」。
カイ氏はただ自分のバーチャルステージを持ちたかったわけではなく、そのステージを他者の才能を見せるための場と捉えていたのだ。
「(中略) 僕は本当に、視聴者のみんなに『壱星の音楽会』のスタッフひとりひとりがどれだけ頑張ってこの3Dライブを実現させたか、その努力と重要性を伝えたかったんだ。彼らがいなければ、このライブは成立しなかった。
そしてこれは、VTuber業界全体におけるスタッフの役割の重要性も表していると思う。彼らはふだん裏方でめちゃくちゃ努力してるのに、その貢献はなかなか評価されないことが多いから。
『壱星の音楽会』を通して、それを大きな声でもっと広く、強く伝えたかった。VTuberである僕たちのような“最前線”の存在だけじゃなく、スタッフがいてくれてこそ、僕たちは物事を実現できるんだってね!」
最後まで見届けるということ
カイ氏は3Dライブの準備を進めるなかで、もう諦めようとしたことがあった。というのも、昨年11月にこの3Dライブを2度も延期していたからだ。ファンや出演者、スタッフ、そして支援してくれた人たちを失望させてしまったと彼は痛感していた。
「この3Dライブはインディーズの中でも特別なものだった。だからこそ、『壱星の音楽会』を絶対に実現させて、最後までやり遂げなければならないと決意したんだ」。
カイ氏はこの3Dライブを“引退公演”にするつもりだったという。
「(中略) でもそうしなかった理由は、仲間やコミュニティからのたくさんの支えと励ましがあったからなんだ!」
カイ氏は去年の6月、ひどく燃え尽きていたときの話を振り返る。吸血鬼VTuberのKoumori Alyssは彼の親しい友人で、カイ氏が他の仕事やコンサートの準備のために配信を休んでいるときでさえ、コラボの話を持ちかけてくれていたという。
「すべてがめちゃくちゃな状態で、どうにもならなかった。そんなとき、チーム・コムフィのElenaとElmerが助けを申し出てくれたんだ。本当に救われたよ。そして久しぶりに『壱星の音楽会』の作業に取り組んだとき、ようやく “呼吸ができる” って感じられたんだ」。
ゲーム『マーベル・ライバルズ』の盛り上がりが最高潮に達していたころ、カイ氏は2025年1月に開催されたVTuberたちの『マーベル・ライバルズ』のイベントのために「Red Ping」というチームを結成した。
Alyss、Vintrickal、Fionn Mellow、Reign Byakkira、Blobbyderp、Zalelythからなるこのチームは、仲間内での練習試合を通じて「Midnight Zone」という別のチームと出会った。
Midnight Zoneは、Civil Fortissimo、Tetsuya Kawaguchi、Stalus、Wynn Terra、Kyozaki、Reya Skyheart、Ryou Kamao、Harebellが参加しているチームで、Red Pingと不思議なくらい気が合い、大会をきっかけに「Red Midnight」という家族のような友人グループを作るほどになった。
「Red Midnightは僕にとって大きな支えであり、奇跡的な “家族のようなフレンドグループ” だ。彼らのおかげで、コンテンツ制作への情熱が再燃したよ。もちろん、今までのファンの存在も含めてね」。
「あなたにもできる」

インタビューの締めくくりとして、「壱星の音楽会」がついに完成を迎えた今、カイ氏がみんなに伝えたいことを尋ねた。
「『壱星の音楽会』が持っていたメッセージは、他の個人VTuberやコンテンツクリエイターたちに、 “3Dコンサートを開くのに、大人気個人VTuberや企業・元企業出身である必要はない” ってことを証明し、勇気づけることだったんだ。規模の大小に関係なく、個人VTuberにだって3Dコンサートに参加し、演じるチャンスがあっていいはずだよ。
要は “チャンスが来るを待っているだけじゃなく、自分で道を切り開いてみない?” ってこと。もちろん、大規模なプロジェクトにする必要はないし、僕みたいに大金をかける必要だってない」。
カイ氏は、3Dライブを見るすべての人に向けてちょっとしたヒントをくれた。
「『Lighthouse Song』っていう、another_shiroさんが作詞作曲してくれたオリジナル曲があってね。それこそが『壱星の音楽会』に込められた真のメッセージを象徴してるんだ。だから、みんなにはぜひ『Lighthouse Song』をじっくり聴いて、歌詞を読んで、そのメッセージを解き明かしてもらえたら嬉しいな!
あと、『Connecting』が第2のフィナーレ曲として選ばれたのは、出演者全員が参加した曲であり、『壱星の音楽会』が3Dライブであると同時に、“音楽が僕たち全員をつないだ” ということを表現しているからなんだ。
出演者やゲストだけじゃなく、裏方のスタッフ、運営、そしてファン、サポーター、視聴者のみんなが、音楽を通じてつながってたんだ!」
※この翻訳記事のサムネイル画像は3Dライブ「Issei On Live(壱星の音楽会)」のサムネイル画像から作成しました。