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岡本健、山野弘樹、吉川慧ほか編著『VTuber学』(岩波書店、2024)を読了したので、感想というか備忘録的なものを。
どんな本か
VTuberを「学問」として捉え、歴史・技術・文化・経済など多角的な視点から考察・解説している本です。本書は複数の編著者によって作られており、各分野ともその分野に造詣の深い著者、あるいはVTuber自身が執筆を担当しています。
本書は第I部「VTuberことはじめ(第1~4章)」、第II部「調査編(第5~8章)」、第III部「理論編(第9~13章)」の三部で構成。各章の合間には「ホロライブ」のカバー社CEOの谷郷元昭氏、「ぶいすぽっ!」を筆頭とするVTuberグループ運営企業を複数傘下に置くBrave group社CEOの野口圭登氏など、業界関係者へのインタビューも収録されています。
誰が読むべきか
本書は以下に当てはまる人におすすめです。
- VTuberの歴史・文化・技術・経済・哲学などの概要を1冊で履修したい人
- 動画やテキストなど、VTuberに関する情報発信メディアに関わる(関わりたい)人
- 比較的最近VTuberのファンになり、ファンコミュニティになるべく早く合流したい人
個人的な感想
ページ数が多いことや執筆者が多いこともあってか、値が張る(税込3740円)のが難点ですが、それを差し引いてもこれ一冊だけでVTuberの基本的な知識がひととおり手に入るのは大変便利です。
構成的にも三部構成の各部で情報レベルがきれいにそろっており、
- 難しいことは考えず、単純にファンとしてVTuberを楽しみたい → 第I部
- 単なるファンの域を超え、VTuber文化のコンテクストを理解したい → 第I部+第II部
- 「VTuberとは何か」「VTuberの存在意義とは」といった哲学的な領域にまで踏み込みたい → 第I部~第III部
という感じで、読み手の目的や知識レベルに応じて「どこまで読めばよいか」が区別されている点も評価できます。いずれにせよ、VTuberに関する情報・知識を一冊にまとめた書籍はほとんどないため、それだけでも価値がある書籍と言えます。
ただし、VTuberは現在も日々成長・進化しているため、特に第I部の内容はすぐに古くなると思います(すでになりつつある)。まずは本書を読み、それからは実地で継続的に情報をアップデートしていくことが求められるでしょう。
【参考】
本書の発売に前後して、編著者自身、および編著者をまじえたYouTube配信が行われています。本書に深い興味を持った人は見てみるとよいかもしれません。