ヒュニはVTuberファン活動と自己表現を両立させている【翻訳転載】

Note

 本記事は海外のVTuber専門Webメディア「VTuber NewsDrop」の記事を、許諾を得て翻訳・転載したものです。


ヒュニはVTuberファン活動と自己表現を両立させている

ヒュニはVTuberのファンアーティストであると同時に、個人クリエイターでもある。この2つのアイデンティティは想像以上にかち合っているが、それがユニークなストーリーを生み出している。

By Andrew Amos (2023/9/9)

 ヒュニ(Hyuni)は“古参”のVTuberファンだ。 ときのそらのデビュー配信を視聴していた「13人の円卓の騎士」の一人というわけではないが、彼女はにじさんじのベテランである葛葉を通じて自身もVTuberになった、十分に古参といえる存在である。

 しかし、ヒュニはVTuberたちをただ受け身で評価していたわけではない。VTuberを軸としたコンテンツの必要性と、それを作りたいという欲求を感じたのだ。

 そこで彼女はペンを取り、ファンアートを描き始めた。そしてすぐにVTuberファンダム(ファンコミュニティ)の中心人物となった。

 「当時、私はまだコミュニティの片隅にいるような感じでした。私はたくさんの日本のインディーズVTuberを見ていたし、コミュニティにもよく参加していました。それが日本語を勉強し始めたきっかけで……アニメキャラ風のファンアートを描き始めたのもそのころです。

 そしてファン同士の語らいの場を見つけたとき、そのコミュニティに本格的に溶け込み始めました。そこでいろいろな人や友人たちに出会ったんです」。

 愛らしいファンコンテンツを作ることはヒュニにとって始まりだったが、決して終わりではなかった。 彼女は以前、アーティストとして他のコミュニティに参加していたが、これまでは違う形で自身を表現したいと考えていた。

 ありがたいことに、ヒュニが見ていたVTuberたちは、彼女に道があることを証明してくれた。エリーラ ペンドラ(Elira Pendora、NIJISANJI EN所属)のようなVTuberを通じて、彼女はカラオケを始めた。最初はさまざまなファン向けのDiscordグループの人たちに向けて歌い、それから、ごく少数の人に向けて配信で歌った。それはすぐに100人を超える規模に拡大した。

 「ときどき歌うのはとても楽しいし、とても満足です」と彼女は言う。「(最近)1、2年ぶりにカラオケ配信をしました。同時視聴者数100人を達成した配信はそれが初めてだったと思います」。

 それだけでなく、彼女は配信でゲームをしたり絵を描いたりもした。 VTuberという形での自己表現は本当に素晴らしく、彼女が応援しているアイドルたちと肩を並べるものだった。

 「カバー曲を録音したり、(お絵描きやカラオケの練習のために)小規模な非公開配信やったりとか、小さなトライをしていました。当時はそういうのをたくさんやっていたんです。

 単なるファンでいたころに学んだスキルを、自分のブランドや個性、スキルに落とし込むことができました」。

 しかし、ファンアーティストであることと、独立した個人クリエイターであることを両立させるのは難しい。

 ファンアーティストの多くは、頑なに自分のファンコンテンツしかシェアしない。ファンアーティストの仮面を外し、個人的なコンテンツを出すと没入感が損なわれてしまう。ヒュニも最初は他のファンアーティストと同じようにしていたが、すぐにそれをNGにした。

 個人クリエイターは、(ファンコンテンツではない)自分自身のコンテンツに注力することも活動目的だ。さらに、最推し以外のVTuberに目を向けることも、一部のVTuberファンコミュニティの人たちからは疑問視されている。

 彼女が学んだのは、両方やってもいいということだ。人々は彼女の個人的な見解を聞きたがり、それは創造性に欠けがちなコミュニティに新鮮な空気をもたらしてくれると思われていた。人々はにじさんじのファンアーティストとしてのヒュニだけに興味を持ったのではなく、ヒュニという人間そのものに興味があるのだ。

 そして、創造力と個性の一部を自分のために取っておくことは、彼女自身の幸せのためにも非常に重要なことだった。

 「ファンの側にいると、ときにはうんざりすることもあります。ファンの間ではたくさんのドラマが起こっていて、推しが誰かに関わらず、誰かのファンでいることであなたもターゲットにされる可能性があるんです」と彼女は語る。

 「自分ひとりでいるときは、多くの問題に対処しなければいけません。でも、共存することは可能だと思います、なぜって…私の視聴者の多くは他のVTuberのファンでもあるから。 だから、推しに関して一緒にオタ活できるだけでも素晴らしいことなんです。

 自分自身がキャラクターでありながら、他のVTuberの大のオタクでありファンでもある。その両立が悪いことだとは思いません」。

 VTuberの視聴者が時間とともに変化していくのを、ヒュニは他の誰よりも見てきた。彼女はかつてミスタ・リアス(Mysta Rias、NIJISANJI EN卒業生)のファンDiscordのオーナーを務めており、また、彼のファンをマスコット化したキャラクター「Mystakes」の生みの親としても知られている。

 少なくとも彼女が交流していたにじさんじ界隈では、ルクシム(Luxiem)のデビューは新たな視聴者を呼び込んだ。

 「(以前は)すべてがある程度コントロールされていたと思います。視聴者は主に男性でした。

 ですが、ルクシムがデビューした後、他のファンダム、主にK-POP、あんさんぶるスターズ!!、プロジェクトセカイの多くのファンも『こいつらもカッコイイじゃん』というふうに、彼らの魅力に気づいたんだと思います。

 そうやって彼らはTikTokで大ブレイクしました。そしてTikTokユーザーが一気にやって来たんです。 それで私はファン層の変化に気づきました……ファン層の平均が若くなっているんだ、って」。

 コミュニティは配信者を中心に成長してきたが、それゆえに彼らの脱退はコミュニティを崩壊させる。8月のミスタの卒業はひとつの試練だった

 その話題について振られたヒュニは、時差のせいでここ数か月、ミスタの配信をあまり見ていなかったと物思いにふけった。 彼女は愛想の良い、英国のキツネ男から遠ざかっていたのだ。

 しかし彼女は当時を懐かしく振り返り、人々は憧れのVTuberを通じて、共通の推しを持つことを超えた真のつながりを形づくることができると今では感じている。

 「燃え尽き症候群のせいで、Mystacord(ミスタ・リアスのファンDiscord)でやり取りするだけでも疲れてしまっていたから、『自分は以前ほど彼のファンではなくなったんだ』と自分自身を納得させました。でもわかりますか? ミスタもきっと燃え尽きてしまったような気がするんです。

 卒業のニュースが流れたとき、すべてが崩れ去ってしまった。 そして思ったんです。『待って、これが現実なのか』って。

 私が企画したプロジェクトや彼のために描いたファンアートのことを考えると、『私の仕事がすべて無駄になってしまう』というよりも、『彼がまだここにいる間に、彼のためにこれだけのことができてよかった』という気持ちです。

 でも、今でもときどき『もっと描いていれば、あるいはもっと多くのプロジェクトをこなしていれば、彼は卒業という決断に至らなかったかもしれない』と思うことはあります。

 それでも、ミスタという存在に対して残された時間で貢献できたことをとても嬉しく思っています」。

 VTuberが配信を続けたり辞めたりするのと同じように、コミュニティのメンバーも配信を見続けたり見切ったりする。VTuberコミュニティは新陳代謝を繰り返す。しかし、これまでに築いた思い出と、これからも注ぎ続けられる愛がまだまだあることを考えると、ヒュニは今でも幸せを感じている。

 「たとえファンの顔ぶれが変わっても、当時知り合った人たちの何人かがもうVTuberに興味を失くしていたり、ドラマや他のコンテンツに流れていったとしても、私は今でもここでの交流のすべてを本当に大切にしているし、ここで築かれたコミュニティが本当に大好きなんです。

 にじさんじではないけど、この前、ホロライブENのコンサート「Connect The World」に行ってきたんです。 私もペンライトで会場を盛り上げるファンの一人をやってきました。

 ファンのみんなで作るペンライトの演出を見ているだけで本当に感動しました。 私はまだホロライブのコミュニティにそれほど深く溶け込んではいませんが、これほど熱心に打ち込んでいるファンを見ただけで『VTuberファンって本当にすごいな』と思いました。

 こうしたパワーのようなものは、実際に体験するのと同じような影響をもたらします。 それを知っているからこそ、私はずっとこの輪の中にいるし、ここからすぐには抜け出せないと感じています」。


ヒュニのもっとくわしいストーリーは、Behind The Modelの動画(以下)をご覧ください。


※この翻訳記事のサムネイル画像は、ヒュニのインタビュー動画のスクリーンショットから作成しました。