ソーシャルプラットフォーム「Spatial」でのスペース作成、今回はカスタムスペース(Custom Space)とSketchfabの組み合わせを解説します。
前回はUnity+Spatial Creator Toolkitでのスペース作成手順を紹介しましたが、今回紹介するカスタムスペース+Sketchfabのほうが難易度は低いと思います(そのぶん制限もありますが)。
カスタムスペース機能を使ったSpatialのスペース作成手順
0. カスタムスペース作成の流れ
カスタムスペース機能を使ったスペース作成手順については、Spatial公式の解説ページがあります(英語)。基本は以下の1~6の手順でスペースを作成します。まずはこの流れを理解しましょう。
- サービストップの「+ Create a Space」をクリック
- Create New Space(Free)の「Upload Custom Space」をクリック
- 以下のいずれかの方法で3Dモデルデータをアップロード
a:Webブラウザのウィンドウにデータをドラッグ&ドロップ
b:ローカルデータを読み込み
c:Spatialのコンテンツメニューからデータを読み込み - 3Dモデルデータ読み込み後、編集 or 完了
- 上記4で「編集」を選んだ場合は3Dモデルデータの位置やサイズを微調整
- 設定完了
本記事ではこれをベースに、Sketchfabで見つけた素材を組み込む手順を解説します。
1. Sketchfabから使いたい3Dモデルデータを探す
まずは作りたいスペースの土台となる3DモデルデータをSketchfabで探します。Sketchfabは3DCGデータを公開・共有・売買するためのプラットフォームで、無料で使える3DCGデータも多数あります。
今回必要なのはスペースそのものとなる3Dモデル、いわゆる環境オブジェクト(environment object)です。環境オブジェクトとして使えるデータは以下の制限があります。
- ファイルタイプはGLBまたはGLTF推奨。ファイルサイズは最大100MB
- オブジェクト数(Object Count)は最大20個(推奨10個未満)
- 頂点数(Vertex/Vertices)は最大300k(推奨100k未満)
- 三角形(Triangles)は最大180k(推奨60k未満)
- テクスチャ(Textures)は下記【補足2】の表参照
Sketchfabでは各3Dモデルデータについて上記の情報が確認できるので、条件に合うものの中からお気に入りの3Dモデルデータを見つけましょう。なお、本記事では下記の3Dモデルデータを使用します。
なお、カスタムスペースの作成には環境オブジェクトのほかに、空を表現するスカイボックス(Skybox)のデータが必要になる場合があります。今回利用する3Dモデルデータは室外に出られないのに加え、窓から見える外の風景もデータに含まれているため、Skyboxのデータの用意・設定は不要です。
2. 空のカスタムスペースを作成/3Dモデルデータのアップロード
カスタムスペースに設置する3Dモデルが決まったら、空のカスタムスペースを作成します。まずは上記の手順0、(1)~(3)の作業を行ってください。
Sketchfabのアカウントを持っている場合、事前にSpatialのアカウントと連携させておくとSketchfabから3Dモデルデータを直接カスタムスペース内に取り込めます。
ただしその場合、3Dモデルデータが適正かどうかを確認することができません。そこで、事前に3DモデルデータをSketchfabで見繕ったあと、その3DモデルデータをSketchfab上で「いいね」(Like)しておきましょう。こうすることで、Sketchfabからの直接アップロードがしやすくなります(「いいね」した3Dモデルデータが優先表示されるため)。
3. 3Dモデルデータの設定をする
アップロードした3Dモデルデータは、そのままでは単なるオブジェクト扱いです。3Dモデルデータをアップしたら、まずは3Dモデルをクリック(選択)し、ページ下段メニューの右から3番目、「Set Custom Environment」をクリックします。
クリックすると「Environment」「Skybox」の選択肢が出るので、「Environment」のほうを選びます。これで3Dモデルデータが環境オブジェクトとして設定されます。
設定された3Dモデルデータに問題がなければ「Looks Good」を、編集したければ「Edit」を選んでください。Editを選んだ場合、3Dモデルデータの位置やサイズを調整できます。今回はモデルの縮尺(Scale)のみ1.1倍に調整しています。
3Dモデルデータ(環境オブジェクト)の置き換えや編集は、データを配置した後でも、何度でも行えます。手順がわからなくなってしまった場合はスペースごと消して、スペースの作成からやり直すでもOKです。
5. オブジェクトの追加
Sketchfabで取り込んだ3Dモデルデータはデータ作者が設定していない限り、椅子やソファーに座ったり、オブジェクトを移動させたりはできません。座るための椅子などが欲しい場合、Spatialのメニューで「Add Content」を選び、「FURNITURE」からアイテムを選んで設置することができます。同様に「STUFF」からは鏡や絵画フレームをはじめ、さまざまなアイテムを選んでスペース内に設置できます。
6. 設定完了
以上でいったんカスタムスペースの作成&設定は完了です。
上記1. でスキップしたSkyboxの設定ですが、SketchfabにはSkyboxのデータもあります。データを入手のうえ、上記3. の3Dモデルデータ設定時に「Skybox」を選べばOKです。また、オリジナルのSkyboxを作れるWebサービスなどもありますが、今回は割愛します。
その他、Sketchfabで入手した3Dモデルデータを加工して、オブジェクトの上に座れるようにすることも可能です。ただし難易度が高いため、こちらも今回は割愛します。
なお、作成したカスタムスペースの名前を変更したい場合は、ユーザーアカウントの「Your Spaces」からスペース一覧に移動したあと、該当スペースの3点メニュー「Rename」から変更できます。
【補足1】Spatialにアップロードできるデータの種類/サイズ
ここからはSpatialで扱える3Dモデルデータに関する補足情報です。
まずはSpatialのスペース内にアップロードできるデータの種類やサイズ上限ですが、以下の表の通りです。動画ファイルについては表にあるもの以外にも、MKV / AVI / WMV / WebMに対応しています。
完全版となるSpatial公式解説は表の後にあるリンクから確認できます(英語)。
ファイルの種類 | 最大サイズ |
---|---|
3Dファイル(最大テクスチャサイズは2048×2048推奨) | |
OBJ | 100 MB |
glTF | 100 MB |
GLB | 100 MB |
FBX | 100 MB |
DAE | 60 MB |
PCD | 10 MB |
ZIP | 500 MB |
動画 | |
MP4 | 50 MB |
MOV | 50 MB |
GIF | 200 MB |
画像 | |
PNG | 10 MB |
JPEG | 10 MB |
TIFF | 10 MB |
ドキュメント | |
100 MB | |
.docx(Word) | 100 MB |
.pptx(Powerpoint) | 100 MB |
.xlsx(Excel) | 100 MB |
NFT | |
NFTを含むブロックチェーン上のデジタルコンテンツの取り扱いはこちらを参照 |
【参考】コンテンツのアップロード/サポートするファイル形式(Uploading Content & Supported File Types)
【補足2】Spatialにデータをアップロードするときのヒント
Spatialのスペース内にアップロードできる3Dモデルデータに関する指標と上限は以下の表の通りです。
完全版となるSpatial公式解説は表の後にあるリンクから確認できます(英語)。公式解説では他にも3Dモデルデータの最適化に関するノウハウなどが紹介されています。
指標と制限 |
---|
テクスチャ(Textures) |
【推奨】 1024×1024px、1ファイルあたり最大8テクスチャ 【最大】 1024px×1024px、1ファイルあたり最大16テクスチャ/2048×2048px、1ファイルあたり最大4テクスチャ |
オブジェクト数(Object Count) |
【推奨】 ・環境オブジェクトの場合:10個未満 ・単一オブジェクトの場合:3個以下 【最大】 ・環境オブジェクトの場合:20個 ・単体の場合:5個 |
頂点数(Vertex/Vertices) |
【推奨】 ・環境オブジェクトの場合:100k以下 ・単一オブジェクトの場::30k以下 【最大】 ・環境オブジェクトの場合:300k ・単一オブジェクトの場合:50k |
三角形(Triangles) |
【推奨】 ・環境オブジェクトの場合:60k未満 ・単一オブジェクトの場合:15k未満 【最大】 ・環境オブジェクトの場合:180k ・単一オブジェクトの場合:30k |
シェーダー(Shaders) |
【推奨】 Unlit 【サポート】 Unlit、 Metallic/Roughness PBR、Specular/Glossiness PBR |
シャドウ(Shadows) |
・モバイル(Android/iOS)でのみリアルタイムシャドウをサポート。ただし品質はそれほど高くはない ・3Dモデルをより印象的にするため、ライティングのベイクを推奨 |
【参考】3Dモデルの準備ガイド(Spatial 3D Model Preparation Guide)