とある日本語フォント、VTuberロゴのデザイントレンドで人気 【翻訳転載】

Note

 本記事は海外のVTuber専門Webメディア「VTuber NewsDrop」の記事を、許諾を得て翻訳・転載したものです(記事中で使用している画像は訳者が独自に用意したもの。元記事とは異なる場合があります)。


とある日本語フォントがVTuberロゴのトレンドで好評を維持

由緒あるロゴをVTuber風にアレンジ? 3人のアーティストに、ロゴのアイデアをシェアする理由を訊いた。

By Jay Agonoy (2024/4/22)

フォントワークスの有料フォント「ユールカ Std UB」

 VTuberにとって、ブランディングは視聴者や将来のコラボ相手に良い印象を与えるために意識すべき事項のひとつだ。

 数人のデザイナー(その中にはVTuberもいる)が彼らの考えをプラットフォーム上で共有した。Kota Kotonyaは数日前、VTuberのロゴと企業のロゴを比較すべきではないと、もっともな理由とともに述べている。

 「VTuberのロゴと一般企業のロゴを比較するのはリンゴとオレンジを比較するようなものです。業界のロゴはシンプルで認識しやすいものであるのに対し、VTuberのロゴは個性を示して目を引くものであることが求められます」。

VTuberのロゴはどのようにして作られるのか?

 VTuberのロゴを作成するプロセスについて詳しく知るため、Kota氏に連絡を取った。Kota氏いわく、「ロゴを最初から最後まで完成させるのにかかる時間は、クライアントが望むスタイルによって異なります」。

 さらにKota氏は、クライアントとのやりとりや修正にかかる時間を除き、ロゴを完成させるのにかかるのは平均して約3時間ほどだと付け加えた。

 Mint FantomeとMatara KanのSummer Specialポッドキャストのロゴを作成したAisu Asaiは、Kota氏の発言に触発され、より楽しいアイデアをもたらすロゴ案を発表した。「ピザハットのロゴをVTuberのロゴにアレンジしたらどうなるか?」というものだ。

 このロゴ案は現在X(旧Twitter)上で1160万回再生、4000リポストされ、3万4000の「いいね」を獲得しており、Razer、ASUS Republic of Gamers North America、iBuyPowerの姉妹ブランドHyteなどの企業もこれに注目している。

 Aisu氏は大量のロゴのアイデアを公開していたので、それぞれのロゴ制作にどのくらい時間がかかるかを彼女に尋ねてみた。

 「ブランドロゴがモチーフの場合、ひとつにつき5分から10分くらいしかかかりません。アレンジにはすべて同じフォントを使っているので非常にシンプルな作業ですし、さくっと仕上げられます」。

 さらに彼女は逆パターンとして、アメリア・ワトソン(ホロライブEN)とクレイジー・オリー(ホロライブインドネシア)のロゴを企業風にするという作例も公開している。

 別のグラフィックアーティスト、Orihimeも、Webブラウザ「Opera GX」のロゴをVTuber風にした例など、彼女のアイデアを共有した。ちなみに、Opera GXの公式VTuberであるGX Auraのロゴも彼女が担当している。

 「私がこれまでに選んだブランドは、すでに特定の製品として知られているので、実際の試作には15分もかかりません。元となるロゴ自体にはクライアントのチェックはありませんから、最大でも30分くらいです! 一番時間がかかるのは、まとまりのある仕上がりにするために、どのパーツをどこに置くかを考えることですね」。

 彼女もまたAisu氏と同じく、“逆アレンジ”にも意欲的だ。「VTuberのロゴ制作だけでなく、企業のロゴ制作も大歓迎です! どんなスタイルのロゴブランディングも『どんなユーザーにアピールしたいのか』が基本にあるので、とても楽しくて興味深いものだと思います」。

VTuberのロゴによく使われるフォントは?

 人気音楽マッシュアッププロデューサーのTripleQは昨年、VTuberロゴの共通点についての見解を投稿した。「ユールカ Std UB(Yuruka UB)というフォントを入手して、いろいろ試してみてください」というものだ。

 ユールカ Std UBはフォントワークスが販売している有料フォント。フォントワークスのサービス内には、同社のフォントがさまざまなメディアでどのように使われているかの事例紹介も掲載されている。

無料で試したい場合はGoogleフォントで利用可能な「Lilita One」で代替することができる(このポストでもおすすめしている)。

 VTuberのロゴに日本語フォントが好まれる理由を、3人のアーティストにそれぞれ語ってもらった。

 Kota氏とAisu氏は、イラストレーターのGogonが日本語フォントを広めた時代までさかのぼる。Aisu氏が語っているように、Gogon氏はホロライブプロダクションのタレントのロゴを多数制作している。

 Aisu氏はこのフォントを自身の作品でも多用している。「このフォントはすでにかなりの影響力を持っており、見栄えを良くするために多くの手をかける必要がないので、VTuberのロゴに最適なフォントなんです」。

 ホロライブEnglish -Myth- の5人中、4人のロゴはGogon氏が作成したと推測しているKota氏も、このフォントの使い勝手の良さを理解している。

 「彼は4つのロゴすべてのベースフォントとしてユールカ Std UB使いましたが、4つの異なるスタイルでありながら、一本芯の通ったフォントの使い方をしています。これはこのフォントの汎用性の高さと、プロフェッショナルな環境での使用にも堪えうるということを示したと思います」。

 一方、Orihime氏はその人目を引く雰囲気を高く評価している。「ユールカは、多くの日本のライバーやデザイナーのベースになっているようです。キュートで陽気なフォントで、見る人の目を惹きつけ、すぐに『これはキュートで社交的なキャラクターを表している』というオーラを放っています」。

 「ユールカは非常に愛されているフォントであり、その読みやすさと柔軟性からVTuberの間で非常に人気があります! また、フォントに手を加えたり、フォントの周りを装飾したりするのが好きなデザイナーにとっても非常に使い勝手のいいフォントです」。

 フォントワークスはユールカ Std UBを「遊び心のある脱力系の“ゆるい”書体」と説明している。文字ひとつひとつは不安定でユニークなデザインだが、手描きのような温かみや優しさ、シンプルさを表現するのには最適だ。

 ロゴについてはまだ研究すべきことがたくさんある。そして、生まれ続けるアイデアはさらに風変わりなアイデアへと連なっていくだろう。

 ロゴの試案を発端に、企業に自社ブランドのVTuberを持つよう説得できる日がいつか来るかもしれない。そう、VTuberのGX AuraがハインツUKに「VTuberのロゴのような一見変わったロゴを作って」と説得したのと同じように。

【補足】 ロゴのアイデアをX(旧Twitter)に投稿する前に…

 自作のロゴ案をオンライン、特にX(旧Twitter)で共有する際には、手作りの芸術作品と同様、いくつかの安全対策が必要だ。

 この記事を作成する過程で、Aisu氏のピザハットのロゴ案が、イラストからオリジナルTシャツを作れるオンラインストアで無断使用されていることに気がついた。

 「たしかに酷い話ですが、今の時代、特に多くの人に見られている場合、自身に創造性がない人が他人のアイデアを食い物にしようとするケースが出てくるのは避けられません」。

 もしその盗用されたロゴ入りのTシャツが注文可能になっていたら、Aisu氏にとっては別の意味を持っただろう。

 ストック画像サービスならボットへの抑止力として画像に透かしを追加するだろうし、一部のサービスは利用者が悪質な業者からの購入を思いとどまるよう、(不正品よりも)魅力的な商品を出すという手段も取れるだろう。


※この翻訳記事のサムネイル画像および本文中画像はFONTPLUS公式サイトのスクリーンショットから作成しました。