MaeFae、VTuber活動と俳優業のバランスについて語る 【翻訳転載】

Note

 本記事は海外のVTuber専門Webメディア「VTuber NewsDrop」の記事を、許諾を得て翻訳・転載したものです(記事中で使用している画像は訳者が独自に用意したもの。元記事とは異なる場合があります)。


MaeFae、VTuber活動と俳優業のバランスについて語る

我々は先日MaeFaeと対談し、VTuber界への参戦や、エンタメ業界でスタートを切る方法などについて話を聞いた。

By Teddy Cambosa (2024/7/21)

 VTuber界では、優れたタレントの多くがVTuberとしての活動だけでなく、実はエンタメ業界全般での実績も持ち合わせていることは珍しいことではない。VTuber活動を副業としている声優や女優が数多くいることも私たちはもちろん知っている。しかし、VTuber活動のかたわら、俳優に歌手、さらには起業家としても活動している人を知っているだろうか?

 珍しいかもしれないが、私たちはインディーズVシンガーのMaeFaeの存在をつい最近知った。MaeFaeは女優であり歌手でもあるMae Claire(メイ・クレア)のバーチャル人格であり、Valorant Masters Madridの告知動画に出演するなど、印象的な活動歴の持ち主だ。

 彼女は女優・歌手としてのキャリアに加え、コミュニケーション&メディア企業、PHIAE LLCの共同設立者でもある。

 彼女はこれらすべてをVTuber活動の一環として行っているが、彼女はどうやってそれを自分一人でこなしているのだろうか。また、成長を続けるエンタメシーンに挑戦したいと思っている未来のVTuberたちに、彼女はどのようなアドバイスをしてくれるのだろうか。

 今回のスポットライト・シリーズではMaeFaeとの対談を実施。VTuber界への進出、エンタメ業界でどのようにスタートを切るかについての知見、また、才能と創造性を見出すという点でVTuber界と一般的なエンタメシーンに共通することを聞いた。

エンタメの世界に飛びこむ難しさ

Q: あなたはクリエイター・起業家・女優として名を馳せてきました。これまでのキャリアでもっともチャレンジングだったことは何ですか?

MaeFae: 今もっとも大変なのは、自身のキャリアを維持すること、そして成長をサポートする環境に常に身を置くことですね。私はそれぞれの立場ごとに異なるコミュニティと関わり、常に新しい人たちと出会い、築いた関係をより強いものにしていかないといけません。

 常に自分の殻を破り続けないと、自分が望むチャンスが訪れたとき、自分がいることを周りは忘れてしまうでしょう。でも、それこそがこの業界に身を置くということです。私は内向的な性格だから、私生活ではプライバシーと一人の時間を大切にしたい。あまりに手を広げすぎるととっても疲れちゃうんです!

彼女がVTuber活動を始めた理由

Q: VTuberになるきっかけ、特にVシンガーの肩書きを持つきっかけになった外的要因は何だと思いますか?

MaeFae: 以前の私はワーカホリックで、ビジネスの構築と俳優としての成長を両立させていました。そのライフスタイルを続けた結果、絶え間ないストレスと不健康な習慣のせいで脳卒中を起こして、一年半ほどキャリアを中断することになってしまったんです。

 その間にYouTubeにカバー曲を投稿し始めたので、クリエイティブな活動自体は続けてました。実は、若いころはたくさん歌を歌わされていたので、歌うことは「好きだし嫌い」といった感じで。Vシンガーになったとき、あらためて歌うことが好きになったんです。

 体調が良くなったころ、SAG-AFTRA(※)が数か月間ストライキをして、俳優業に復帰できなくなってしまったんです。それで配信業を始めて、VTuberにすっかり夢中になりました。

※SAG-AFTRA: Screen Actors Guild – American Federation of Television and Radio Artists(映画俳優組合・米テレビ・ラジオ芸術家連盟)のこと。

 ストライキが終わった後も仕事は信じられないほど少なかったから、VTuberとしての活動に全力を注ぎました。このジャンルでチャンスを見つけて、どこまでいけるか試してみることにしたんです。

Q: ブランディングの目的のひとつは、歌の実績を充実させることだと理解しています。VTuber界において音楽面で達成したいことはなんですか?

MaeFae: 他のVSingerと同じように、オリジナル曲を作って、アルバムを出して、最終的にはまた観客の前でライブがしたい。もっと大きな夢を語るとしたら、アニメやゲームの挿入歌を担当したり、逆に自分の曲がアニメやゲームで使われたりとかしたいですね。

ファンとのつながりとその維持

Q: あなたがネット上で多くのヒントやアイデア、インスピレーションをシェアしているのを見てきましたが、あなた自身が記憶にとどめておきたいことは?

MaeFae: 誰かが苦しんでいるとき、私の仕事や経験を、その人が前に進むための支えとして見てほしい。彼らが意義あるクリエイターになるだけじゃなくて、よい人間になれるような刺激を与えたいと思ってます。

Q: ファンを惹きつけ、その数を増やしていくために、どのような戦略がもっとも効果的だと思いますか? また、ファンとの個人的なつながりをどのように維持していますか?

MaeFae: 以前、VTuber以外の分野で活動し、多くのファンを持つ女優と仕事をしたことがあります。彼女はコンテンツを作って、投稿して、ファンと交流した後は基本的にソーシャルメディアにいっさい触れなかったんです。これは彼女から学んだもっとも驚いたことのひとつで、私自身の仕事への取り組み方も変わりました。

 彼女は言葉どおり、競争相手がどうなっているのかまったく知らず、自分と比較する相手もいませんでした。彼女は自分の作品を向上させることだけに集中して、ネット上でどう評価されるかについてまったく気にしていなかったんです。

 ファンを惹きつけるために使える戦略はたくさんあるけど、自分の基盤を成長させるためにあれこれ試す前に、まずはそういう考え方を持つことが必要だと思う。だから、自分を誰かと比較したり、自分の努力を軽んじたりしないで、できる限りのことをしてって言いたいです。

 それと私は、ネット上で交流している人たちがどんな見た目をしていようと、画面の向こう側にいるのは人間なんだと自分に言い聞かせてます。だから、彼らを下に見るんじゃなくて、個人的に知り合いになりたい人として接してますね。

 もちろん、こうした考え方はその人が自分の限界を知っていて、それをさらに強くできるという自信があることが前提ですが。Maeflowers(※MaeFaeのファンネーム)の中には、私の考え方を少し「パラソーシャル」と感じる人もいるかもしれない。

 でも、彼らが私とどのように関わろうと、私たちが何らかの関係を築いてきたという事実は否定できないし、その関係は尊重されるべきだと思う。私は自分のために行動しているけど、同時にコミュニティのためにも多くのことをしているんです。

業界での実体験をVTuber活動に活かす

Q: 起業家として学んだ重要な教訓を教えていただけますか? また、自身のビジネスを立ち上げようとしているコンテンツクリエイターにアドバイスをお願いします。

MaeFae: 私が起業家として学んだ主な教訓は2つ。拒絶に慣れることと、手放すことを学ぶことです。精神的なストレスを早く捨てることができれば、改善を続けるためのエネルギーがまた湧いてくるから。

 自分のビジネスを立ち上げようとしているコンテンツクリエイターの人は、誰かの力を借りることを良しとし、その使い方を学んでほしい。けっして一人でできるとは思わないで。仲間がいなかったり、周りにチームを作ったりしなければ、人生で成功することは非常に難しいから。

 それと同時に、彼らを大切に扱い、感謝の気持ちを持ってほしい。彼らはあなたのために時間とエネルギーを投資してくれるんだから。それと、自分の夢の責任は自分だけにあるということ、たとえ誰かを雇ったりチームに入れたとしても、自分ほど一生懸命働く人はいないということは覚えておいてほしい。

 一緒に仕事する人にとってあなたは最高の見本となるべきではあるけど、その期待を他の人に押し付けるのはダメだと思います。

Q: エンタメ業界における成功の定義は人それぞれだと思いますが、特にVTuber業界でアピールすべき強みは何だと思いますか?

MaeFae: 自分自身のことをよく知って、自分が世の出すものに自信が持てるようになる必要があります。誰もが自分の長所と短所を認められるわけじゃない。誰もが新たな人気者になろうとしているんだから、多くの個性がぶつかり合う場では簡単に迷子になってしまう。

 自分らしさを発見した後は、業界のことを、正しく言えば“世界”を深く理解して、自分がどこに溶け込めるかを見極めることが大切だと思います。

 ただ、競争が激しい分野もあるけど、「誰もあなたにはなれない」ということには安心していいと思う。もっとも理想的な自分になれるよう頑張りましょう。努力を続ける限り、あなたの才能を受け入れてくれる場所がおのずと見つかるはずだから。

複数の事業を同時にこなす能力

Q: あなたの意欲と情熱は「ルネッサンスの女性」のようだと表現できるでしょう。VTuber活動を含め、複数のエンタメ仕事のバランスを取るためのモチベーションをどのように見出していますか?

MaeFae: 私が活動を続けられる原動力は純粋に“愛”ですね。世界を変えるとか、コミュニティを改善するとか、そういったもっと崇高な目的があればよかったんですけど。私がこの仕事を続けているのは、人生をより楽しくするためです。

 芝居や音楽、ビジネスやアニメを取り上げられたら、きっとMaeFaeは存在しなかったと思う。ときには情熱が冷めたり、ひとつのことに飽きたりすることもある。そんなときは別の楽しいことに切り替えて、気が済んだらまた戻ってくればいいんです。

 何かを完全に「やめる」ことはないです。自分の人生で今はどれが一番大事なのかを知っておくというだけ。それが私の稼ぎにつながることなら、自分が誠実であり続けるためにもなおさらやり遂げなきゃいけないなって。

「クリエイター燃え尽き症候群」への対処

Q: 多くのVTuberが活動を通じて「クリエイターの燃え尽き症候群」を感じていますが、活動を軌道に乗せるためにどのようなアドバイスをしますか?

MaeFae: 休みを取ること。しっかりと休みましょう。そして、チームとファンにそれを知らせること。燃え尽きてしまう気持ちはきっとみんなにもわかってもらえると思うから。

 創作をやめたからといって、クリエイターでなくなるわけじゃない。この世界は、みんなが思っている以上に多くのことがからみ合っています。外に出て直接人と話したりすることで、他人が自分の考えにどう反応するかを直に知ることができるし、VTuberとしてのスキルも上がるはずです。

 もちろん、休止中にまでスキル向上のことを考えるべきじゃないけど、人生で行うすべてのことは、成長を後押しするか、妨げるかのどっちかだから。もし楽しめそうなのであれば、あと10年はこの仕事を続けられるように、やるべきことをやってください。

今後の大きなプロジェクトは?

Q: あなたのキャリアで、今後もっとも期待しているプロジェクトや目標は何ですか? エンタメ・配信・ビジネスにおいて、あなたの役割はどのように進化していくと思いますか?

MaeFae: 秘密の大きなプロジェクトがたくさん進行中です、えへへ! ~ (˵•̀ᴗ – ˵ )☆ 今までやってきたことの中で、VTuberは管理する人もいないし制限もない、私の創造性を発揮する最高の方法です。

 アニメやゲームの分野に自分の才能を投じていることに一番興奮してます。今後数年のうちに、みんなのお気に入りの作品に声優で参加したり、アニメやゲームの実写化作品に出演したり、アニメのOPやEDで歌ったりする姿を見てもらえるようになったらいいなって思ってます。

 欧米の2D・3D・4Dエンターテインメントの世界で「あのアニメガール」として知られるようになりたい!


【謝辞】 エンタメ業界での自身の歩み、特にVTuberとしての目標について、時間を割いてくわしく語ってくれたMaeFaeに心から感謝します。

 彼女のコンテンツはTwitchYouTubeTikTokで見ることができるほか、X(旧Twitter)Instagramでもフォローできます。VTuberとしての活動に関する詳細は、彼女の公式Webサイトを参照してください。


※この翻訳記事のサムネイル画像はMaeFaeの公式Webサイトのスクリーンショットから作成しました。