無言のVTuber、Mizuzu ネオは魅力的。でも「かわいい」とだけは言わないで 【翻訳転載】

Note

 本記事は海外のVTuber専門Webメディア「VTuber NewsDrop」の記事を、許諾を得て翻訳・転載したものです(記事内の画像は訳者が独自に撮影したものであり、元記事とは異なります)。


無言のVTuber、Mizuzu ネオは魅力的。でも「かわいい」とだけは言わないで

Mizuzu ネオは自身の境遇にとらわれず、無言のVTuberとして常に革新的な活動を続けている。

By Andrew Amos (2023/2/20)

 Mizuzu ネオは、自分が言葉を話せた時期を覚えていない。

 23歳の彼女は、生まれてすぐに負った怪我のせいで物理的に声を出すことができなくなり、それからずっと自分を表現する方法を見つけることに人生を費やしてきた。

 「声を出すってどういうことなのか、どうやったら声を出せるようになるのか、それを身につける機会は私にはほとんどありませんでした」と彼女は語る。

 「声を出せることが人生において必要不可欠なことだと知るまでは、たいして影響がなかったんです。そう、『どうして私はお父さんやお母さんみたいに話せないの?』と思うようになるまではね」。

 コミュニケーションを学ぶことがスタートだった。彼女はできるだけ早く文字を書くことを学び、ホワイトボードを持ち歩いてフレーズを書き留め、会話に参加するようになった。

 アニメの世界では『聲の形』の西宮硝子を思い浮かべる人もいるだろうが、これはMizuzuにとって現実であり、空想の映画ではない。

 幼少期の彼女はASL(American Sign Language、アメリカ手話)の個人指導を定期的に受け、手話を学ぶことに重きを置いていた。手話の学習には彼女の家族も参加した。きちんとした双方向のコミュニケーションは手話ができる人に限られたが、少なくとも手書きでやりとりするよりは会話に不自由はないだろう。

 「『なぜ全部書かないのか』と聞かれたことがあります。でも、すぐに誰かに話したくなるような育ち盛りの子供には、それはとても難しいことなんです」。

 言葉で表現しきれない感情はアートに託した。自称「日本のアニメ・漫画オタク」だった彼女は10代の頃にアートスクールに通ったが、弟が自分以上に上達し始めた頃には退学した(自尊心が傷ついたせいかは議論の余地がある)。

 「そのとき私は『アートは自分を表現する方法だ!』と思ったんです。言葉で表現できなくても、文章やアートで表現できるんだって」。

 一方で彼女はゲームやオンラインカルチャーにずっと強い関心を抱いてきた。PointCrowAlpharadSmallantといったゲーム配信者に夢中になり、自身もゲームに挑戦し、自分のスキルを限界まで高めていった。

 声を出せない人間が映像コンテンツ制作者になる、ましてや配信者になるというのは前代未聞のことだった。しかし、Mizuzuはこれを挑戦と捉えた。

 「始める自信をどうやってつけたのか、よくわかりません。なぜなら、始めたときは『コミュニケーションの手段が必要だ』ということしかわかっていなかったから。かなり時間がかかったけど、なぜか自信と勢いに乗っていました」。

 「始めた当初は、メモ帳を引っ張り出して、画面を共有してドーン! という感じでした」。

 そして陳腐な言い方だが、VTuber活動(VTubing)で彼女はついに探し求めていた声を手に入れることができた。そのために乗り越えた苦難? その苦難があったからこそ、もっと頑張ろうと思えたし、どうしたらうまくいくかという工夫もできたのだ。

(超高速のテキストチャット入力を武器に、Mizuzu ネオはTwitchに挑む/画像元:Mizuzu ネオのTwitch配信)

VTuber活動の輝きを見つける

 Twitchで見るMizuzu ネオは、リアルとそれほど変わらない。彼女は配信外でも配信中と同じようにハイテンションで、純粋なカオスの中で生きがいを感じている。彼女の配信は単なる演技ではないのだ。

 彼女には皆が知っているような「キャラ設定(lore)」がない。しかしこの先、何か物語を紡いでいくことを断念したわけでもない。配信上のMizuzu ネオは、現実の彼女自身に不良っぽさとタヌキの姿を追加しただけの存在だ。

 「配信でやっていることの半分は実生活での私と同じで、キャラ設定を作るなんてことはできないと思います」と彼女は笑う。

 「多くのVTuberがやっている、『キャラクターと“中の人”のギャップ』も私にとってはどうでもよくて、自分のことを好き勝手に言っているだけなんです」。

 彼女のVTuberとしての始まりは、他の多くの人とそれほど変わらない。彼女はひと握りのYouTuberに影響を受け、そこからVTuberという沼にハマってしまったのだ。しかし、ホロライブEnglishが登場する前の時代の出身である彼女は、英語圏にもっと広いコミュニティがあることを知らないまま、2020年初頭にデビューしてしまった。

 「私はほとんど何も知らないままVTuberのコミュニティに入りました。ほぼ1年間、ほぼ一人でVTuberのことを調べ上げ、そのやり方を学びました。基本的にすべて自分で苦労しながら学んだんです」。

 Hololive Mythのデビュー前からVTuber界の可能性をなんとなく感じてはいたが、そのデビューがMizuzuの頭の中に将来への種をまいたのだ。

 「2~3年前、本格的に始める前はホロライブ、特に森カリオペが大好きで、純粋に『自分にもできるかも?』と思うようになったんです」。

 「私がカリオペから刺激を受けたのは、彼女が好きなように自分を表現しているところ。歌ったり、ゲームをしたり、ホロライブのみんなとたくさんコラボしたり、いろいろなことをやっている。自分も好きなように自分を表現して、何も考えずにただ趣味としてやっても受け入れてもらえるんだと気づきました」。

 「でも、そのときは無言の配信者なんておかしい、と思ったんです」。

 そして彼女がいろいろと調べ始めてから3か月後、Mizuzuはゼントレヤ(Zentreya)に出会う。VShojoのスターはMizuzuと同じような方法でVTuber活動を始めていた

 無言ではないものの、ゼントレヤは自分の声を使ったことがない。最初は画面上のテキストボックスで会話していた。その後、彼女はプライバシーを守りながら少しでも交流しやすくするために、音声合成技術(speech-to-text-to-speech technology)を導入したのだ。

 理由はまったく異なるが、大枠の考え方はMizuzuが望んでいたものと同じだった。それは長期的に配信をするという未来を実現するための「アイデアの宝庫」だったのである。

 「配信では私が話すたびにリアルタイムでタイピングしているところを見られていたし、新しい文章を入力するたびに前の文章を全部消していました」と振り返る。

 しかし、常にMizuzuには他の人とは明確に違う点があった。Mizuzuはいきなり喋り出すことはできず、それが彼女ができることとできないことに大きく影響した。Mizuzuとゼントレヤを比較するのは簡単だが(かつての私を含め、多くの初見の視聴者はそうしてしまうが)、両者はまったく違う境遇にあるのだ。

 「ゼントレアのことは100%好きです。ただ、私はゼントレアはまったく同じではありません。私が無言なのは自分ではどうしようもないことだから。比較されるのはあまり好きじゃない。私にはゼントレイアとちょっと似たところがある、ただそれだけだと思います」。

(Mizuzuとゼントレヤはよく比較されるが、両者の事情はまったく異なる/画像元:VShojo日本語公式サイト

 「私の配信は他の人とは違う、ユニークなものにしようと思っています! 他では見られないようなコンテンツとかね。でも、自然体でいるという意味ではあまり気にしません!」

 「ゼントレヤの影響は大きいと思います。彼女は素晴らしいコンテンツクリエイターで、とても大好きです。私が何をするにしても、彼女と比較されるのは当然です」。

言葉を話せないまま大人になることの難しさ

 Mizuzu ネオは生まれつき話せなかったわけではない。だが、彼女が知っていることはそれだけ。普通の人にとっては当たり前にできる簡単なことも、彼女にとっては当たり前ではないのだ。

 ホワイトボード(あるいは他のツールなど)を使うことで、コミュニケーションは容易になった。しかし、より困難だったのは、彼女の障がいに対する社会的障壁と誤解だった。

 「言うまでもありませんが、幼いころは当然、しゃべれないことをバカにされました。学校ではいじめのようなこともありました」。

 「私には“声”がないこと、その“声”こそがその人の大きな魅力のひとつだと言うことを知っていたので、本当に、本当に辛かったです。私は「声が出せる」ことがすごく重要だと思っていたので、投げやりになっていました」。

 「それよりも、私と同じような道を歩んできた人があまりいなくて、自分ひとりしかいないことのほうが辛かったですね。人と話す、ショーを見る、歌を歌う。そうした、誰にでも手に入れる機会があるものを、私だけが自分の意思で選ぶことができなかったんです」。

 「周りの人たちが私のことを誤解しているとは思いません。彼らの立場だったら、私もきっといろいろと質問していると思うから。ときには私が耳が聞こえないと思われたり、本当に何か問題があるんじゃないかと思われたりもしました。『息はできる?』なんて馬鹿げた質問も何度も受けました。あれは絶対に忘れられません」。

 「でもVtuber活動を始めたら、驚くほど多くの人が受け入れてくれたんです」とMizuzuは振り返る。ゲームやアニメに囲まれて育った彼女は、配信を始めるまで、ソーシャルメディアもあまり利用したことがなかったという。

 Mizuzuが今まで体験してきた嫌がらせや閉鎖的な雰囲気はなく、リアルだと生じる障壁もなしに交流できる機会がたくさんあった。チャットで会話をしていれば、周りは彼女が話せないことはあまり気にならなかったのだ。

 「“受け入れられたい”と思ってネットに飛び込んだけど、最初からずっと超オープンな形で受け入れてもらえたのはとても衝撃的でした」。

 「みんなは信じられないほど私を理解してくれるけど、それがどうしてなのかもわかりません。多くの人が純粋に理解を示してくれることに、ただただビックリしているんです」。


 「幼いころ、両親は私がインターネットを利用することをとても警戒していました。それは大人になった今も私に影響を与えています。『ワンクリックですべての情報を盗まれるし、このカメラに姿を映したら住所も顔もバレちゃう!』ってね」。

 絶え間ない注意や質問の嵐には、今でもイライラすることがあるという。

 「TwitterやTikTok以外からの初見の人のほぼ全員が、『なんでしゃべらないの?』と聞いてきます。そうした質問にもこらえてきたし、今でもそうです」。

 しかし、彼女が気づかされた重要なことが2つある。ひとつは「声を出せないことが彼女を規定しているのではない」ということ。そしてもうひとつは「声を出せないことが彼女のすべてでもない」ということ。彼女の個性を活かす方法は他にもあったのだ。

 「(声を出せないことは)重要ではないと思って、自分自身と内面にもっと関心を持つようになりました。実際に行動することは、何かを“言う”ことよりも重要です。私の個性は間違いなく私に人間らしさを与えてくれているし、それがなかったら私はかなり退屈な存在になってしまうと思います」。

 それを受け入れるのは難しいことだったが、彼女は人生でいつもしてきたように、ことあるごとにそれに立ち向かい、解決策を見出してきた。

 「あるとき、私は自分のやり方でやっていこう、私のことを受け入れたいと思ってくれる人に受け入れられるようになろうと決めたんです。気にするのはやめて、声を出さなくてもできること、ほかにやれることを考えるようになりました。そうしたら、とにかく動いて、どんな形であれベストを尽くそうという気持ちになったんです」。

「私はワーカホリックなので、いつでも向上心を持って、より良いものを求めることに大きな意味を感じています。自分自身を受け入れ、自分ではコントロールできないことも受け入れ、すべてを自分のやり方でやろうと決めました! 好きなことをしたり、好きな服を着たり、そういうことです」。

 だが、声が出せたらどんな生活ができるだろう、と想像することは止められない。

 「たぶん、配信で大声でみんなに叫ぶんじゃないかな。前にも考えたことがあります。もし私が話すことができたら、本当にひどいことになると思う。本当にうるさくて、頭がおかしくなるくらいに」。

 「しゃべれるという高揚感で最初の半年くらいは超うるさくて、それからようやく落ち着く感じかな。もし話せたら自分をもっと表現できるだろうけど、でも、何をするかはまったく想像できないです」。

喋れないのにどうやって配信するのか?

 Mizuzu ネオは、Twitch配信で何でもできるわけではない。無言であるがゆえの制約もたくさんある。

 まず、プレイに全神経を集中させなければならないゲームは基本的にアウトだ。Valorantや Apex Legendsなど、Twitchで人気のオンライン対戦ゲームのほとんどは除外されてしまう。タイピングに手を使うため、実際にプレイする余裕がほとんどないからだ。

 しかし、彼女はそれを完全に止めることはしなかった。本業で培ったプログラミング技術を生かし、Twitchのチャット欄を利用してプレイするようになったのだ。「Twitch Plays Pokemon」(※)などに触発されたMizuzuは、ゲームの限界に挑戦し、独自の奇抜なチャレンジを行っている。

※Twitch Plays Pokemon:ゲームの『ポケモン』を、Twitchの配信チャット欄のコメントをコマンド代わりにしてプレイするというもの。初出は2014年とされている。

 「Twitchのチャット欄での操作を自分の配信でどこまでやれるか、バカみたいにやってみようと思いました。正直なところ、自分の配信にコードを組み込むのは、信じられないほど楽しいチャレンジでした」。

 「私はいつも配信するとき、少なくとも何かしらのチャレンジをしてきました。トーナメントでTwitchのチャット勢を無理やり自滅させたり、ランダマイザ―(ゲーム内のアイテム配置やイベント発生をランダム化するツール)ありでプレイしてみたり、罰ゲームありのプレイをしたり、ゲームを改造して難易度を上げたり。プログラミングの要素を加えることでいろんなバリエーションが生まれて、とてもユニークになるんです!」

 それをするためには配信外での仕込みも必要だ。確かに、ボタン操作のための複雑なコードを設定するのは、ただ配信をするよりも負担は大きい。しかし、そのおかげでTwitchのチャット欄にゲームをプレイさせることができ、配信時間をエンターテイメントに変えることができるのだ。

 その最たる例が、格闘ゲームのキーアサインを設定するする配信だ。Twitchのチャット欄と彼女自身が30秒ごとに操作を交代するというもので、その配信では毎試合苦戦するはめになった。Mizuzuはそれをいい意味で「大参事」と称した。

 「その配信では、下ボタンのコマンドを『アヒル』(duck)と名付けたんです。なぜかというと、チャット欄(コメントするファン)がそれを望んだからです。そこで、すべての移動コマンドをアヒルの形に変更しました。左に移動するときは『クワッ』(quack、アヒルの鳴き声)、右に移動するときは『マガモ』(mallard)という具合に」。

 「そしてある人が、移動コマンドのひとつとして『危ないリッキー・ランブルのパパの変なガレージセール4(Risky Ricky Rumble’s Dad’s Weird Garage Sale 4)』という名前を提案しました。そのせいで、コマンドを実行するたびにチャット欄にその長いコマンド名をフル入力しなければならなくなったんです。結局そのフレーズがどういう意味だったのか、いまだにわかりません」。

 「その配信では4時間で1、2勝しましたが、4時間のうち2時間はコマンド名を決めるのに費やしました。正直、その配信の中ではそこがお気に入りポイントです。今年はTwitchのチャットでランダムに話題を振りつつも、ちゃんとレールの上を進んでいくような、そんな形のコンテンツにシフトしていきたいですね」。

 Mizuzuは、この縛りを気に入っているわけではない。言葉を発せないために、与えられた機会よりボツになったアイデアのほうが多いという。

 「どんなに楽しい、すごいと思ったことでも、あきらめないといけないことがたくさんありました」。

 「音声操作や他の人とのコラボなど、声が出せないことがネックになります。話せないことで、数え切れないほどのアイデアが頓挫してしまいました。だから自分に合ったコンテンツを見つけるのはちょっと難しいし、Twitchのチャット欄にいるファンをどうやって楽しませたらいいか、より賢く考える必要に迫られました。特に私のTwitchのチャット欄にいるのは大勢のいたずら小僧のようなものなので」。

 「ゲームに挑戦したり、Twitchのチャット欄を使ってゲームを操作したり、チャット欄のファン同士でトーナメント形式で競わせたりとか、より簡単にユニークなことができるスタイルに落ち着きました。そのすべてが私にぴったりなんです!」

 コラボはVTuberの間でも特に慎重になるポイントだ。Mizuzuは最近までテキスト読み上げソフトを一切使用していなかった(実際に使ってみたところ、視聴者が40%近く増えたそうだ)。そのため、自分の配信に人を招待したり、他の人の配信に出向いてコラボしようとするのはなかなかに大変なことである。しかし、それを回避する方法はある。

 Mizuzuは現在、Discordで自分の手打ちコメントをコラボ相手に送る方法を取っているが、ふだんの彼女はゲームを遊んだりするなど、難易度の低い配信内容にとどめている。テキスト読み上げソフトを使えば楽になるだろうが、それでも限界はある。

 「『エルデンリング』の全編ランダマイザ―プレイを通じて、読み上げソフトを力技で学ぶことにしたんです。ゲームをクリアするまでに、毎回およそ8時間の配信で7回かかりました。でも私はそれをやり遂げて、ちょっと違和感は残るけど、自分の配信スタイルにフィットする音声読み上げソフトを見つけました」。


 「アプローチがまったく変わるだけでなく、変な要素も加わっています! ソフトは私がメッセージを送ってから2秒くらい遅れて読み上げるんです。アバターには多少口パクをさせるんですが、ズレの穴埋めはほぼ私がやらなくちゃいけなくて、そもそもなんて読めばいいかわからない言葉もあるから大変です」。

 「(反響は)とてもポジティブでした! コメント欄に書き込んだり画面をずっと見ていたりしなくても配信が楽しめるので、みんな信じられないほど喜んでいます」。

Mizuzu ネオの未来

 配信が好きでなかったら、Mizuzu ネオはここまで来ることはなかっただろう。このメディアのおかげで、数年前までは想像もできなかったような自己表現ができるようになった。配信はまた、彼女が人生の早い段階で逃していた、適切な交流を得るための強力なツールになった。

 「配信の最大の魅力は、自由なコンテンツ作りができるところだと思います。好きなことが何でもできるんです! 私はとても創作好きで、書くことも、企画することも、新しいアイデアを考えることも大好きです。だから、そのすべてを配信という“箱”の中に入れることができるのは、とても素晴らしいことだと思っています」。

 「でも、それだけではありません。もしコミュニティの人たちが私のやることを気に入ってくれたり、もっと見たいと思ったりしてくれなかったら、こんなことをする気になれませんから」。

 「例えば、配信を見に来てくれたファンをネタにしたりとか、配信するたびに自分自身について新しい発見があるように思います。それは自分自身についてもっと知ることでもあります。自分の限界はどこなのかとか、自分は他人からどう見られたいのかとか」。

 彼女の創造性は、彼女が配信を始めたユニークなバックグラウンドからきている。声を出せないことが「不幸中の幸い」というわけではないが、結果として他の配信者とは一線を画している。

 「もし私が無言でなかったら、おそらく私のユニークなスタイルやテイストもなくて、普通にValorantの配信をしていたでしょう。私はそれを祝福とは思いません、むしろナーフです。きっと私があまりにも優秀でクールでセクシーなので、世界のほうが私をナーフしなければならなかったんだと思います!」

 「今がどうあれ、もし私が普通に話せていたら、それは私ではありません。声を出せないことが祝福だとは思わないけど、そのおかげで自分の道を切り開くことができたし、より創造性を高めて他の人と差をつけることができました」。


 はて、彼女の出発点はどこだったのか? 彼女は今では「まったくの別人」になっており、彼女の目にはすべてが良いほうに映っている。

 「今が人生で一番幸せです。『どうやってこうなったんだっけ? 最初からそうだったっけ?』ってね。VTuberとしての活動を始めた瞬間から、人生でこれほど幸せだったことはありません。ずっと上り坂でした」。

 「ストレスが溜まる瞬間もあるし、気分の浮き沈みもあるけど、配信を始める前の最低の状態とは比べものにならないです。配信活動を始める前は最低値が100点満点で1点、最高値は20点でした。今は最低でも50点、最高は1000点です」。

 クリエイティビティを発揮し、充実感を得たいというモチベーションもあり、Mizuzu ネオは配信3年目の大仕事を控えている。2月20日にデビュー記念日を迎えた彼女は、次なる一年の幕開けに、大規模なサブアソン(subathon)を開催する予定だ。その先に何があるのか、それは誰にもわからない。

 「これからも配信を続けてもっと大きくしていきたい! もっと大きなプロジェクトとか、もっと多くのコミュニティに関連するもの。それからコラボレーションも。今までできなかったような大きなシリーズものや企画やプロジェクトに力を入れたいです」。

 「次の一年は、何かキャラ設定とか世界設定みたいなものを作るとか、アバターのデザイン変更とか、正気の沙汰とは思えないような大きなことにも挑戦してみたいと思っています。今年はMizuzuの年だと決めているんです」。

 Mizuzu ネオは、さまざまな魅力にあふれている。声を出せないことは、彼女の物語や性格のほんの一部であり、決してそれだけが彼女を形作っているわけではない。彼女は騒々しくてとても競争心が強い、自称「グレムリン」だ。技術的なスキルも非常に高く、自分の存在をアピールするためのやる気も旺盛だ。

 しかし彼女が唯一認めないのは、「かわいい」という評価だ。その言葉だけが唯一彼女を黙らせることができる。

 「私は全然かわいくない! それだけは最期まで言い続けます」。

 「自分の配信チャット欄で『かわいい』と言われずに配信をしたことはないと思うし、コラボ相手やスポンサーやパートナー先にも言われなかったことはないです。でも、私は生まれてから一度だって自分のことをかわいいと思ったことはありません」。


※この翻訳記事のサムネイル画像はMizuzu ネオのTwitter投稿画像から作成しました。