「VTuber企業のトップに立つ」。Brave groupのビジョン 【翻訳転載】

Note

 本記事は海外のVTuber専門Webメディア「VTuber NewsDrop」の記事を、許諾を得て翻訳・転載したものです(記事中で使用している画像は訳者が独自に用意したもの。元記事とは異なる場合があります)。


「VTuber企業のトップに立つ」。Brave groupのビジョン

日本のVTuberグループ企業が「80億の、心をうちぬけ」を実現するための歩みを知っておこう。

By Teddy Cambosa, Jay Agonoy (2024/3/14)

(画像出典:公式プレスリリース

 世界中に存在するVTuber企業の中で、Brave groupは躍進している。VTuber NewsDropは、日本のVTuberコングロマリットとその国内外の子会社をこれまで何度か取材してきた。

 他のVTuber企業と同様、Brave groupもVTuber大手として知られるようになるまでは困難な道のりをたどっている。当初運営していたのはRIOT MUSICとあおぎり高校(現在はviviON運営)のみだった。しかし、2022年6月に日本の人気グループのひとつである「ぶいすぽっ!」(Virtual eSports Project、VSPO!)を経営統合したことが大きな転機となった。

 彼らはそれにとどまらず、歌手の道明寺ここあと長瀬有花をマネジメントする会社がシンガーデュオのヒメヒナを傘下に収めた(※)。海外拠点であるV4Miraiglobieも所属タレントを増やしている。ぶいすぽっ!は英語圏と中国語圏の市場にも進出予定だ。

 最近ではIDOL VIRTUAL TALENTSと業務提携、EC部門でBrave groupと直接仕事をしている。その他、メタバースの研究開発を行っているグループ傘下の子会社もある。

 昨年11月にはコーポレート・アイデンティティ(CI)を刷新。また、タイのバンコクと中国の深センに現地法人を設立し、VTuber業界の頂点、業界ナンバーワンになるというミッションを明確にしている。

 Brave groupが注目を集める理由は他にもある。今回はCEOの野口圭登氏に同社の事業について語っていただいた。

【訳者注】
※:実際はヒメヒナを運営するStudio LaRaはBrave group直下の子会社で、RIOT MUSICの傘下ではない。

Brave groupのCI刷新

(Brave group CEO・野口圭登氏/画像出典:Brave group公式サイト

― CIの刷新にともなう、Brave groupのパーパスのもっとも大きな変化は何でしょうか。

野口圭登氏(以下野口):ビジョンやロゴとともにパーパスを一新するのではなく、再構築することにしました。パーパスを「世界に、日本の冒険心を」(Japanese Adventure, Worldwide Romance)と変えることで、日本発のアイデアでありながらグローバルに展開していくというコンセプトを伝えたいと考えています。日本というルーツを忘れることなく、世界へ羽ばたくという志を再確認することができます。

 また、これまでの私たちのビジョンは、メタバースという枠にとらわれたものでした。それを「時代をつくる、事業化集団へ」(A Symphony of Innovations, Pioneering a Brighter Tomorrow)と言い換えることで、新時代をもたらすために一致団結して行動する起業家の連合体というイメージで、その範囲を広げることができます。

 すべては、国内市場に限定するのではなく、世界中にリーチを拡大するという私たちの新たな野心と結びついています。したがって、当社の新しいロゴには、世界一のVTuber企業になるという私たちの意志も込められています。

 私たちはアイデンティティや目標を再定義するという以上に、この機会を利用して社会へのコミットメントを再確認しています。今こそ、私たちが約束を反故にしないことを示す時であり、勝つか負けるかの局面を迎えたのです。

(Brave groupのパーパス・ミッション・ビジョン・バリュー/画像出典:公式メディア「ぶれすと」

海外の動向とチャンス

― 日本のエンターテインメント企業として、子会社を設立して北米およびヨーロッパ市場へ進出するにあたり、どのようなトレンドやチャンスがあると考えていますか。

野口:(コロナ禍後に)リアルイベントが再開される中、私はロサンゼルスで開催されたAnime Expo 2023に参加し、日本のコンテンツに対する熱意が非常に高いことを自身の目で確認しました。

 日本のアニメやマンガは、ネットフリックスなどの配信プラットフォームのおかげで、特に欧米では非常に人気があります。日本のメディア人気の高まりと並行して、これらの地域では個人VTuberが大幅に増加していることも確認できており、これはVTuberの黎明期に日本で起きていたことと重なります。

 VTuberという産業は約8年前に日本で始まり、世界的に成長し、個人VTuberとともに新しいタレントや事務所も登場しています。2023年にいたるまで強い成長と流行が続くなか、私たちは世界中にオフィスを設立する適切な時期だと判断しました。

(海外に4か国5拠点、国内は東京に6拠点を持つBrave Group/画像出典:公式プレスリリース

海外で存在感を示すための課題

― Brave groupが海外のVTuber市場に進出するにあたり、どのような制約に直面しましたか? また、現地で存在感を示すためにどのような戦略をとるのでしょうか。

野口:当社の戦略には、主要地域に現地オフィスを設置し、現地で運営することも含まれています。海外のVTuberは日本からマネジメントを行うことが多く、時差だけでなくタレントとの距離感がありすぎてマネジメントに支障をきたすこともあります。現地にオフィスとスタッフを置くことで、それらの問題のほとんどを克服できます。

 グローバル市場では比較的新参者である私たちは、良好な環境を整え、タレントとの強い関係を育むことで、他の事務所との差別化を図る必要があります。また、日本企業であることを活かし、ミュージックビデオやライブ、イベントなど、日本国内と遜色ないクオリティのコンテンツ制作にリソースを投入することも可能です。

 企業として提供できるリソースとサポートの両方を示すことで、私たちと一緒に仕事をするメリットを個人のタレントに示せるようになる必要があります。

 さらに、3D配信やその他のコンテンツ用に収録スタジオを設置しています。これは多くの個人VTuberや他の事務所にとって、まだ手の届かない大きな長所です。(収録スタジオも用意することで)所属タレントがVTuberとして成功するために私たちがどれほど取り組んでいるかを示すことができれば幸いです。

(米国に新設されたモーションキャプションスタジオ/引用元:Oshi LiveのYouTubeチャンネル)

「ぶいすぽっ!」統合について

― 「ぶいすぽっ!」について話しましょう。ぶいすぽっ!はすでに単独で成功を収めていたにもかかわらず、Brave groupがこの経営統合がグループにとって有益であると判断した理由は何ですか? また、英語圏・中国市場への展開についても教えてください。

野口:たしかに、「ぶいすぽっ!」はBrave groupの一員になる前からすでに人気がありました。ですが、改善の余地は間違いなくありましたし、適切なサポート体制があれば、ファン向けに大規模なイベントを開催し、より楽しんでもらうことで人気をさらに高めることができます。

 Brave groupに参加することで、ぶいすぽっ!はより多くのリソースにアクセスできるようになり、日本を代表するVTuber企業のひとつとしてブランド力をさらに高めるコンテンツを開発できるようになりました。

 ぶいすぽっ!の資産とBrave groupのリソースが完璧にマッチし、チャンネル登録者数はすぐに200%以上増加しました。ぶいすぽっ!のブランド認知は日本国内でも堅調に伸びていますが、私たちの目的とミッションは、eスポーツの楽しさに関するぶいすぽっ!の哲学を、日本を超えて世界と共有することです。

 私たちは「ぶいすぽっ!」が世界中で知られる存在に成長する可能性に大きな自信を持っています。

(2022年夏、3年ぶりに開催された「神田明神納涼祭り」とコラボ。期間中は延べ5万人が来場し、過去の来場者数記録を更新した/画像出典:PR Times
(ぶいすぽっ!初の単独大型オフラインイベント「ぶいすぽっ!学園文化体育祭」/画像出典:PR Times

Brave groupの2024年の目標

― Brave groupの2024年のVTuber関連の取り組みや展開について、ファンはどんなことが期待できそうでしょうか?

野口:昨年お知らせしましたが、ぶいすぽっ!の海外展開が2024年から始まりますのでご期待ください!

 また、V4Miraiやglobieを通じたBrave groupのVTuberコンテンツの海外展開や、Brave group APAC(タイ拠点)が立ち上げる、現在企画中の新たなプロジェクトにも注目してください。

 また、idol Virtual Talentsとの業務提携はVTuberコンテンツだけでなく、今後発売されるグッズなど、世界中で複数のコラボレーションを展開していきます。

(idol Virtual Talentsと業務提携/画像出典:公式プレスリリース

 このインタビューを通じて、「80億の、心をうちぬけ」というBrave groupのミッションを少しでも知ってもらえれば幸いだ。

 今回のインタビューのために貴重なお時間を割いていただいた野口圭登氏、および執行役員のKyuyon Kim(金 葵娟)氏のご協力に心より感謝申し上げます。


※この翻訳記事のサムネイル画像はプレスリリース素材から作成しました。