【雑記】 「VTuber」 が米国で商標登録出願されている件

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ことの概要

 2023年4月中旬、「VTuber」の単語がアメリカで商標登録出願されている、というニュースを目にしました。

 記事からたどって米国特許商標庁(United States Patent and Trademark Office、USPTO)のデータベースにアクセスすると、該当の商標登録出願が見つかります。

 商標登録出願されているのは「Vtube」「Vtuber」「Vtubing」の3語(Tは小文字)。出願者はMota Vincent Kなる人物(個人)で、出願日は2023年3月23日、4月14日時点では「審査待ち」のステータスになっています。

 そして出願書類には以下のような記載があります。

●商標の定義(IDENTIFICATION)

Entertainment in the nature of live performances by individuals who use virtual avatars with motion tracking or rigging set ups, primarily but not limited to the animation style of anime.

(モーショントラッキングやリギングを施したバーチャルアバターを使用する個人による、ライブパフォーマンスの性質を持つエンターテイメント。アニメ調が主流だが、それだけに限らない。)

●実例に関する記述(SPECIMEN DESCRIPTION)

Vtube, Vtuber, and Vtubing is a culture currently on the internet which I originated the word that is widely used to describe this style of content. Here you may see the tag being used on popular Vtuber streaming website Twitch.tv to describe many people’s contents.

(Vtube、Vtuber、Vtubingは、現在インターネット上にある文化で、この種のコンテンツを表現するために広く使われている言葉の起源は私にある。Vtuberも利用する人気配信サイトTwitch.tvでは、このタグが多くのコンテンツで使われているのを確認できる。)

●言い換え(TRANSLATION)

The English translation of Vtube, Vtuber, Vtubing in the mark is virtual tube, virtual tuber, or virtual tubing, someone who performs streamed and digital content with a digital image rigged to their body via various means of programs to produce a live animated model through which they perform; The wording Vtube, Vtuber, Vtubing has no meaning in a foreign language.

(「Vtube」「Vtuber」「Vtubing」の英訳は「virtual tube」「virtual tuber」「virtual tubing」であり、さまざまな方法でデジタル映像を身にまとってライブアニメーションモデルを生成し、それを通して配信やデジタルコンテンツのパフォーマンスを行う人のことである。「Vtube」「Vtuber」「Vtubing」という言い回しは、外国語では意味をなさない。)

●申請者による雑感(MISCELLANEOUS STATEMENT) ※長文のため抄訳のみ記載

 2009年、私はアニメのキャラクターとモーショントラッキング技術を組み合わせてインターネット上でコンテンツを制作するYouTuberになることを思いつきました。

 2009年から2010年にかけて、インターネットの未来について議論していたWebフォーラムに(Vtube/Vtuber/Vtubingに関する)文書を投稿したことがあります。私がこの言葉をオンラインに投稿して以来、その人気と使用率は高まっていきました。そして今ではVtuber(Vtubing/Vtube)はひとつのインターネット文化となっています。

 私は、この言葉について使用料を請求するつもりはなく、この言葉の起源を人々に知ってもらうため、この言葉の歴史的な正確さのために商標を保持したいと考えています。

【20240103追記】申請却下

 同申請は書類の不備により2023年12月19日付で申請却下となりました。ただし申請者が書類の不備を訂正すれば再度申請可能になるようです。

余談

 この商標登録出願が認められるか、もし認められた場合にどのような影響があるのかは不明です。出願者は「使用料を請求したりはしない」と言っていますが、保証はありません。

 今回は翻訳しませんでしたが、出願者は以前にも起源を主張する目的で別の商標登録を行ったことがあるそうです(現在は破棄したようですが)。いずれにせよ、本件に関しては引き続き動向を注視していきたいと思います。

 ちなみに、最古の例かは確信できませんが、今回の出願で定義されているVTuber(VTube/VTubing)に当てはまりそうな最初期の事例としてはAmi Yamatoが挙げられます(2011年6月動画初投稿)。彼女はロンドン在住の日本人で、2011年の東日本大震災に際しては流暢な日本語でメッセージ動画を投稿しています。

 日本国内では、「バーチャルYouTuber」のワードを最初に使ったのはキズナアイ(2016年11月デビュー)ですが、いわゆるVTuber的な活動ではウェザーニュースのウェザーロイド Type A Airi(通称ポン子)のほうが古かったりします(2012年12月にイベント初登場。当時の動画は非公開に)。