フィリピンのVTuberシーンにおけるVOLs独自の強みとは
VOLsはフィリピンに照準を合わせ、進化を続けるVTuber業界での名声確立を目指している。
By Jay Agonoy (2023/6/28)
フィリピンのVTuberシーンがどれほど複雑であっても、ファンを増やす可能性を見出している企業はまだ存在する。そのような企業のひとつが、シンガポールに拠点を置くCRAZIA Pte.だ。同社はeスポーツ系VTuberプロダクション「VOLs」を運営する株式会社である。
VOLsの創設者である新井陽介氏はちょうどフィリピンを訪れており、マカティ市にあるホビーショップ「アニポリウム」で6月16日(日)に開催されたVOLsデビュー記念パーティーの後、彼と話をする機会に恵まれた。
さらに新井氏とメールで会話を続けるうちに、CRAZIAがなぜ最初にフィリピンからVTuber事業を始めたのかが見えてきた。
VOLsが最初にフィリピンを選んだ理由
ーシンガポールに拠点を置く企業として、なぜフィリピンを最初の活動拠点に選んだのですか?
新井陽介(以下新井) : シンガポールに拠点を置くVTuberプロダクションとして、最初の活動拠点にフィリピンを選ぶにあたっては、さまざまな要素を慎重に検討しました。フィリピンに決定した理由は次のとおりです。
・豊富な人材 : フィリピンには、エンターテイメント業界で強い存在感を示す、活気に満ちた多様な人材がいます。私たちはゲーム、特にeスポーツに重点を置いているので、この国で才能あるVTuberを発掘し育成することに計り知れない可能性を感じました。
・強力なVTuberコミュニティ : フィリピンには熱狂的なファンのいる、アニメとコスプレのコミュニティがあります。今、国際的なVTuberタレントが多くの人に注目されています。日本テイストのVTuberと現地のタレントを引き合わせ、フィリピンでのプレゼンスを確立することで、この活気あるコミュニティを活用し、VTuberの地元ファンを育てることを目指しています。
・文化的親和性 : フィリピンには日本のアニメや漫画が好きな人が多いので、日本テイストのVTuberコンテンツでそのニーズに応えます。これらのコンテンツをフィリピンに持ち込むことで、両国のクリエイティブコミュニティの架け橋となり、コンテンツ制作における相乗効果を模索します。
・グローバル化の機会 : フィリピンには、グローバルな舞台で活躍したいと考える、隠れた才能の持ち主がたくさんいます。VOLsはVTuberプロダクションとして、そうした才能を世界に輸出する機会を提供したいと考えています。
総じて、最初の活動拠点としてフィリピンを選んだのは、地元のタレントを活用し、成長するVTuberコミュニティと関わることで、「アジアでブームを巻き起こして世界市場に進出する」という私たちのビジョンと一致します。私たちはこの機会に興奮しており、フィリピンの才能ある人材と一緒にユニークで魅力的なVTuberコンテンツを創造することを楽しみにしています。
VOLsの切り札
●VOLs1期生:天狐そらら
【訳者注】 天狐そららは2023年7月26日付で契約解除となりました。VOLs公式ツイッターより以下のアナウンスが出されています。
【Notice of Tenko Sorara’s Contract Dissolution】
— VOLs Official (@VOLs_pro) July 26, 2023
We have an important announcement to make. As of July 26, 2023, we regret to inform you that we have terminated the contract with the VOLs VTuber, “Tenko Sorara.” pic.twitter.com/ApdFHABZhu
●VOLs1期生:白兎みくみ
●VOLs1期生:アリア・シンセ
ーご存じのように、VTuber業界はすでにさまざまなタレントや事務所が設立され、飽和状態にあります。ここフィリピンでは、VOLsも企業発VTuberグループのひとつに過ぎません。他の地元グループや企業、そしてもちろん国際的なグループと比較して、VOLsはどのような強みがあるのでしょうか?
新井 : 確かに、この分野ではすでに数多くのタレントや事務所が設立されているのは事実です。しかし、VOLsにはいくつかの点でアドバンテージがあると思います。
・日本のイラストレーターやLive2Dモデラーと密接に協力することで、現地のグループや企業に比べてより日本的なテイストのVTuberキャラクターを生み出すことができます。
・グローバル企業は彼らがすでに持っているもの、彼らがデザインしたものを市場に提供することを重視しています。一方、VOLsはフィリピンのコミュニティのことを考え、彼らのニーズに耳を傾け、市場が求めているもの、そしてフィリピンのニーズに基づいたオタク文化を提供することに努めています。
・さらに私たちは、VTuberタレント向けの技術サポートも開発しています。これにより、ファンの皆さんはタレントにより没頭し、より魅力的な体験をすることができるようになります。
キャラクター作成に人気アーティストを起用
ー各キャラクターのデザインを人気のVTuberアーティストに依頼した理由は?
新井 : 官能的な体験は、視覚や聴覚といったさまざまな感覚から生まれるものです。私たちはタレントがVTuberの“魂”であると信じていますが、タレントのユニークな特徴を表す体験を提供するには、VTuberのデザインとアートスタイルも同じくらい重要です。だからこそ、私たちは日本の熟練したアーティストと協力することにしました。
日本のVTuber文化をローカライズすることで東南アジアの市場にミックスさせたいと考えているので、特に東南アジア市場向けにグローバルなタレントをデザインした経験のある日本のイラストレーターと仕事をしたかったのです。
人気のVTuberアーティストの協力を得ることで、彼らの専門知識・評判・アートスタイル・ファンとのエンゲージメントを活用して、優れた魅力的なキャラクターデザインを開発することを目指しています。このようなアプローチにより、VTuberの全体的なクオリティと魅力が向上し、競争の激しいVTuber業界で成功することができると信じています。
VTuberシーンにより大きなインパクトを与えるために
ーデビュー記念のウォッチパーティーを現地開催することで、より大きなインパクトを狙っているのですね。ここフィリピンで視聴者を増やし、業界関係者やコミュニティ全般から注目されるために、他にどのようなことを計画していますか?
新井 : 今はファンのことが最優先です。詳しいことはまだ言えませんが、デビューウォッチパーティーとは別に、視聴者に向けて魅力的なソーシャルメディアの取り組みを行う予定です。また、ファンと直接関わり、ファンとのつながりを強め、VTuberとそのコンテンツについての認知度を高めるために、地元でイベントを開催する予定です。
ーフィリピンの次にVOLsとしてVTuberタレントをデビューさせたい国はどこですか?
新井 : フィリピン以外への進出については、さまざまな要因によって決まります。世界の各地域でのビジネスチャンスを慎重に評価し、既存のVTuberコミュニティ・言語のアクセシビリティ・文化的類似性・市場の可能性などの要素を考慮しながら、次にVTuberタレントがデビューする国を決定していきます。
包括的な視聴者獲得戦略を実施し、次の展開国を慎重に選択することで、VOLsはフィリピンだけでなく、他の市場でも強力なプレゼンスを確立することを目指しています。
※この翻訳記事のサムネイル画像はVOLs公式サイトのスクリーンショットから作成しました。