Hanakoのリブランディングがもたらした自由な創造性とは 【翻訳転載】

Note

 本記事は海外のVTuber専門Webメディア「VTuber NewsDrop」の記事を、許諾を得て翻訳・転載したものです。


Hanakoのリブランディングがもたらした自由な創造性とは

一度は人型ドラゴンとしてデビューしたHanakoは“ケモナーVTuber”に生まれ変わり、何も隠すことなく自身を表現できるようになった。

By Andrew Amos (2023/4/29)

 今のHanako(現ryker)の姿はあなたが初めて見たときのような、バーチャル空間を漂っていた姿とは少し違って見えるかもしれない。

 2年前にHanakoがデビューしたとき、彼女は“ストロベリードラゴン”だった。神話に登場する生き物と真っ赤な果物、彼女が好きなものを融合させたアバターだ。また、彼女はさまざまなオンラインコミュニティで彼女の過去の姿も披露し、100を超えるオリジナルキャラクターの中からもっとも心に響いたその姿を選んだ。

 「気まぐれで選んだのは……自分のメインペルソナのひとつを使いたかったからです」と彼女は言う。

 「私はその姿が本当にクールだと思ったので、そのアバターを人前に出して、周りの人がどんなふうに彼女を好きになり、また、どんな風にコミュニケーションするのかを確かめようと思ったんです。基本的にはそんな始まりでした」。

 しかし実際には、彼女はそこに自分のアイデンティティの大半を詰め込んだ。インターネット上の“ケモナー”コミュニティでさまざまな経験をしてきたHanakoは、その“ケモナー愛”をVTuberとして表現することに特に違和感は覚えなかった。

 VTuber活動を始めた当初は、人型のキャラクターに重きを置いていた。何かを擬人化した人気VTuberも大勢いたし、中には完全に人型ではない姿のVTuberもいたが、全体としてはそれは明らかにマイノリティだった。

 それがHanakoの頭に疑問の種を植え付けた。

 「ケモナー好きのコミュニティ出身の人間として、その状況にガッカリすることはなかったけど、変な感じに見えました。

 私はケモナーのアバターでVTuberの世界に入りましたが、周りの人が私のことをどう思ったかはわかりません。だからそこにこだわったんです。

 でも、VTuberのコミュニティにいればいるほど、私はもう人型のキャラクターではいたくないと思うようになりました。その姿が私自身や、私のやる気に合っていないと思ったからです」。

 そんなわけで、Hanakoはデビューからわずか数か月でリブランディングに取りかかることになった。まずは真っ赤なドラゴンから、パステル調のブルーやピンクを基調とした、白い人型ドラゴンに生まれ変わった。


 しかし、新しい人型での“再デビュー”からわずか数週間にして、彼女は完全に振り切ることに決めた。彼女は、小柄だがエネルギーとカリスマ性にあふれた「小さなグレムリン型のドラゴン」の姿を披露したのだ。その新しい、完全にケモナーの姿を通して、彼女は創造的な意味で解放された。

 「この姿のほうがより活発に動けるし、私が想像できる他のどの姿よりも自分の性格に合っています。私はとてもうるさいし、メチャクチャだし、ときには感じが悪くなることだってある。変顔もするし、くねくね動き回ったりもします。尻尾なんて狂ったようにパタパタさせるし。そういったすべてのことが、私にはより自然に感じられるんです。

 馴れ合いって、なんかイケてないときがあるんですよね。だから思ったんです。『私は馴れ合わないほうがいいんだ』って。純粋に自分らしくありたいと思って、そこからは今の路線に進みました。今は前よりずっとハッピーです。カメラに映る自分がより自分らしく、より純粋に感じられるので、以前より良い配信ができていると思います」。

 それでも彼女にはまだ、自分がコミュニティで広く受け入れられるかどうかという懸念があった。しかし、彼女が成長し、同じ志を持つコンテンツクリエイターを見つけるにつれ、自分が孤立することはないだろうと理解できた。今までのコミュニティで拒絶されたとしても、新しいコミュニティを見つけられるだろうと。

「嫌われないか心配だったけど、嫌われてもいいやと思う自分もいる。見た目は関係ない、大事なのはその裏にある個性なんだって。

 私がモコモコしたドラゴン(今のこの姿のことです)になったときには、たくさんの反発がありました。あまり交流のない2つの異なるコミュニティを組み合わせるのは、ちょっと(クレイジー)です。ケモナーになったことで嫌がらせのDMもたくさん来たし、フォロワーもがくんと減りました。

 でも、人はそのVTuberの個性に惹かれて残るのだから、気にする必要はないんだと気づきました。出ていった人たちは以前の私の姿が好きで、それだけが理由で留まっていたんだと思います。だから彼らは出て行ったんです」。


 リブランディングはビジュアルの刷新だけではない。Hanakoは配信に対する考え方も改めた。彼女は(Twitchパートナーの証である)紫のチェックマーク獲得を急ぐよりも、自分のペースで成長することを重視した。そのため、Twitch partner push(Twitchパートナーになるためにファンの後押しをお願いすること)も最近になって終わらせた。

 その結果、Hanakoはより快適で安定したVTuberの新たな一面を知ることができた。ケモナーだというだけで彼女の新しい姿を軽蔑する人たちはブロックし、自身が10年以上携わってきたコミュニティを真に表現することができるようになったのだ。

 「私はVTuberですが、何よりもまずケモナーなんです。私が育ち、今もいるコミュニティで、私は自分自身をもっと表現したいんです」。

 リブランディングしたVTuberはHanakoが初ではないし、最後でもないだろう。VTuber業界にはメディアの成長に合わせて常に新たなスタイルを採用していくという大きな潮流がある。英語圏では、2022年にゼントレヤ(VShojo所属)とヴェイ(元VShojo、現Mythic Talent所属)がビジュアルとプロフィールを大きく変更した。2023年にはSenzが全面的な見直しを行うなど、多くの大物VTuberが自己表現の方法を変えることに興味を示している。

 今では完全にドラゴンになったHanakoにとって、大小さまざまなクリエイターが新しいアイデンティティ獲得の機をうかがう様子を見るのは刺激的だ。

 「実際にリブランディングするVTuberは多くはないし、たいていはリブランディングを恐れています。それによって以前と同じ人だと理解してもらうのが難しくなるからです。

 知名度の高いVTuberが自分のためにリブランディングして、より自分らしさを感じるようになるのはクールだと思います。何度かリブランディングを経験した私としても、みんなが自分の正しいと思う方向に進むことを嬉しく思うし、すごく誇らしく思う。

 私みたいに、無理に周りに合わせようとするのはやめましょう。私はそのせいでVTuberとして活動しながらも混乱してしまったから。『なぜ自分らしくないんだろう?』『何か欠けているような気がするのはなんでだろう?』ってね。

 自分が“これだ”と思うことに真正面からぶつかっていくこと。自分を偽らないこと。誰かのために自分を隠す必要はないんだよって言いたいです」。


 Hanakoのストーリーは、Behind The Modelの動画(以下)でくわしく知ることができます。


※この翻訳記事のサムネイル画像は、HanakoのTwitch動画のスクリーンショットから作成しました。